#画図洗熊夜行

画図洗熊夜行のおまとめ

ひまる または #ひまるのぼる

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ひまる

ひまるのおはなし

これはあるほしにうまれたふれんず、ひまるが ほしがほろぶいじょうのながいときをいきて ほしのきおく、そのものになるまでのおはなし

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じゃぱりぱーくへん

こうざん ひまるとやみちゃん

ひまるはひまる。こうざんちほーにすんでるの。

ひまらやたーるのふれんずだよ。

 

あなたはなんのふれんず?

そうだ、えだたべる?

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ひまるはきがついたらこうざんちほーにいたよ

ひまらやたーるのふれんず?なんだって

 

こうざんはほとんどだーれもいないの、でもしずかでなんだかあんしんしちゃう。

それからね、ゆきがすごいんだぁ。

ゆきのあらしのひには、じっとしてかぜがおさまるのをまつんだ。

ひまるのすんでるところには、ほとんどほかのふれんずさんはこないんだ。

とりのふれんずさんも、こえられないたかいやま。

やまのうえからしまをみまわすのが、ひまるのにっかだよ。

 

ひるはやまにのぼって、よるにやまからおりてごはんをさがすよ。

ふれんずになった今でも、にぎやかなところはにがて。

ぼすもひまるのすんでるところにはめったにこないんだよ。

だから、えだをいろんなきから、ちょっとずつもらって、もぐもぐするんだよ。

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やまのうえからおりてきたふたごのふれんずさんたち。

あなたたちは、ふたりともヤミちゃんっていうの?

まっくろなけがわ、おおきなくろいしっぽで、きらきらした、りっぱなつの。

なんのふれんずさんなのかな…?

「わらわは、」

「わらわじゃ。」

えー…。

 

それにしても、ひまるより、たかいところからくるこ、はじめてみたよ。

とりのふれんずさんだってこえられないやまなのに。

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ひまるよりたかいところにいる、ヤミちゃんたち。

おともだちになったよ、えへへ。

いっしょにやまにのぼるのはたのしいな。

やまのうえで、ヤミちゃんたちはいろんなおはなしをしてくれる。

ちいさいけど、ふしぎなおはなしをたくさん、たーくさんしっているんだ。

ほしのはじまり、ほしのおわり、ほしになったとりさんのはなし、そらとほしたちのいのりのこと。とてもつよいおうさまのはなし。おおきなたたかいと、ちいさなわんこのはなし。

それに、ふれんずたちのことも、ぱーくのことも、なんでもしっていて、すごいんだよ。

きっとじゃぱりはかせだね。

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ヤミちゃんたちの、お、おうたはどくとくだね。

なんだかぐらぐらするくらい、すごい。

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ヤミちゃんたちのおはなしをきいていると、ひまるは、いろんなところへいってみたくなったよ。

そして、やまのしたのほうにも、おともだちができたよ。

いえいぬちゃん、はかせとじょしゅ、あむーるとらちゃん、ゆきひょうちゃん、それからもっとたくさんのふれんずさん。

 

ふれんずのみんなはヤミちゃんたちのことを知らないし、会ったこともないっていうんだ。

ヤミちゃんたち、ひまるよりもひとみしりなの…?

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ひがのぼってつきがのぼって、きせつがかわって、またかえってきて、たくさんくりかえすと、いつかきのうとあすはまざりあって、ひまるがやみちゃんたちになるんだって。

どういうことなのかな…?

ヤミちゃんたちのおはなしは、いつもよくわからないんだよ。

なのに、なんとなく、そうなのかな?というきもするんだよ。ふしぎだね。

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やみちゃんたちはいつもみたことのない、ふしぎないろと、あじのえだをくれるんだ。

よもつぐへいっていうんだって。

それはヒトにも、ふれんずにも、すごいちからのある、しゅごけものたちでさえたどりつけないところにはえる、とくべつなえだなんだって。

とくべつ、すごい…ひまるもいつかそこにいけるんだって。

ほんとうかなぁ?

 

あれ?なんでヤミちゃんたちはいけるんだろう?

ヤミちゃんたちはふしぎだからね。

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きんいろのえだは、しあわせのあじがする。

くろいえだは、かなしいあじがする。

なんだかぽわぽわ、しくしくするんだ。

でも、なつかしい、ずっとむかしにたべたような。

このあじをしっているような。

どうしてだろう。

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よもつぐへいのえだを、ほかのふれんずがたべるとしんじゃうの!?

ヤミちゃんたち、どくいりはだめだよ!

「フレンズによってしょうかできるえだは」

「ちがうのじゃ。そなたはたべられないが」

「ほかのこがたべられるえだもあろう?」

た、たしかに・・・。

「そなたにしかたべられぬえだじゃ」

「ぞんぶんにあじわってたべるがよいぞ」

「ゆっくりしっかりとたべるがよいぞ」

うーん、とくべつなあじかぁ、とくべつかんがあるね!

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ヤミちゃんたちは、ヤミちゃんたちのことをすこし、おはなししてくれた。

せかいきかい、ほぞんするもの、おわりをよぶもの、かげんつき、じょうげんつき、くろいりゅう、しゅうえん。なんのことか、ほとんどわからなかったけれど。

それから、ヤミちゃんの住んでいるところは、たたまがはら?やものくに?よむのくに?って言うんだって。

やまのてっぺんよりもっとたかいところへ、うみのそこよりひくいひみつのぬけあなをとおっていくんだって。

いったいどういうことかなぁ?

ヤミちゃんたちはふしぎだね。

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ふれんずさんたちの、だれもたたまがはらのことをしらないの。

としょかんで、はかせとじょしゅにきいたら、「タカマガハラというちほーは、しょもつにはあるけれど、じつざいしないちほーなのです」っていうんだ。

ヤミちゃんは、もしかしてひみつのしゅごけものさんなのかな。

もうひまるにはふしぎすぎてよくわからないよ。

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ヤミちゃんたちはとってもふしぎ。

…かえるところをこっそり、ついていったけど、きりがふかくなっていつのまにかいないんだ。

あの、からんころんとしたあしおとは、みえなくてもわかるはずなのに。

それから、いつも、どこからくるのかもわからない。

ひまるこわがりだから、ものおとやしんどうにはとってもびんかんなんだけど。

でも、きがついたらちかくにいるんだ。

まっしろなふかいくもがでたひに、あるいてくるのだけは、わかるんだけど。

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ヤミちゃんたちが、とてもだいじなことをおしえるっていうんだ。

「いまわらわが語ったことさえ忘れさるじゃろう」

「これよりはるかとおいハテのハテで」

「そなたは世界機械になるのじゃ」

「世界の果てでハテたとき、思い出すじゃろう」

「望んだように世界になり死ぬとよい」

「永遠とは童であり妾じゃから」

「それがそなたの意味なのじゃ」

だって。

なんのことかぜんぜんいみがわからないし、ほんとうにわすれちゃいそう、だよ。

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あるよる、くものないたくさんのほしのしたで、やまのちょうじょうで。

きゅうに、ヤミちゃんたちとおわかれをした。

あえるのはきょうがさいごだって。

「云わなかったが、妾の星の巡りと、そなたの星の巡りが」

「交わる夜は今宵で最後なのじゃ」

「夜明け頃にはそなたは眠ってしまうじゃろう」

「明けたときわらわはもう、ここにはおれぬ」

「ここより、そなたの果てしない旅が始まり、幾多の別離が待つだろう」

「けれど明けぬ夜の中、多くのふれんず、ふれんずでない者に出会うであろう」

「別れと出会いが繰り返さるる螺旋のなかで」

「何度も幾度も絶望するじゃろう」

「けれど、そのたびのぼるがよい」

「よいか、ハテのハテで、きっとまっておるから」

「終わりも超えたさきに、かならずおるからな」

「「さらばじゃ」」

「さて、よあけまで、ひまるのお話を聞きかせておくれ」

「んむ、今宵わらわはそれを大事にもってゆくからの」

ひまるは、いっしょうけんめいいろんなおはなしをしたよ。

それでつかれて、ねむってしまった。

もう、にどとヤミちゃんたちがおりてくることはなかったんだ。

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としょかん しなないひまるとふれんずたち

とてもながいながいときがすぎた。

ふれんずたちもせだいがかわり、かわも、おかもそのかたちをかえた。

 

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こうざんちほー、そのなかでもとくにたかくけわしいゆきやまで。

ひまるは、まだ、いきている。

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ひまるはなぜかずっといきている。

じゃぱりぱーくにいると、おともだちができる。

そして、たくさんのおともだちを、みおくった。

おともだちは、みんないってしまうんだ。

ひまるをおいて。

 

かなしいね。

ふしぎだね。

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あるとき、ひまるはタールたちをたすけることにした。

むれはどんどんおおきくなって、どうぶつだけど、ひまるよりつよいタールがあらわれて、おおきくつよいかれが、むれのりーだーだ。

そしてやまには、えさがなくなった…どんどん食べちゃう、やまの木がもうなくなる。

ひまるのちからはとてもおよばない。

 

としょかんできいたら、かなしいけれどしょくもつれんさがひつよう、なんだって。

どうしてなんだろう?

きをうえても、タールたちがすぐにたべてしまう。

タールたちがふえたから、それをたべるゆきひょうや、おおきなわしがふえる。

 

それで、よわいこどもからうえて、しんでいく。

そうして、むれのかずはまたちいさくなった。

ふれんずになっていない、タールたちをたすけるのはまちがってたのかな。

 

なぜか、このことばがくちをついてでた。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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ひまるは、しまのちょうろうなんだって、しらなかった。

ぱーくのおさなんて、とてもできないよう。

タールたちのりーだーでさえ、うまくできなかったのに。

でも、いちばんながいきしてるから、ちょうろうなんだって。

そうだんだけならなんとか、がんばるよ。

 

ひまる、やせいかいほうしても、みんなみたいにするどいつのをぜんぜんつかえないし。

ただ、ながくいきてるだけだよ。

 

そうだんも、ぜんぜんわからないことばっかり。

おうえんしかできないよ。

ちょうろうは、やまのぼりよりたいへんだ。

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とてもおおきなこおりのかたまりがふってきた。

それでずっと、つめたくてくるしいゆめをみていた。

 

つぎに、きがついたら、いわのすきまにねてたんだ。

ひまる、ながいあいだ、いなかったんだって。

あれはほんとうに、ゆめだったのかな。

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ひまるがながいきなのはどうしてかなぁ?

ふれんずたちも、どーぶつたちも、もりも、かわもかわっていく。

ひまるはずっとかわらない。

ふれんずさんたちも、せだいこーたい、していく。

わかれはとてもかなしい。

でも、たくさんのであいもあるし、まだまだいろんなふれんずさんがいる。

ちょうろうで、たよってもらえるから、たぶんひまるはちょうろうだ。

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はかせとじょしゅがいなくなっても、またいつのひか、はかせとじょしゅがいる。

もとどうぶつのしゅるいは、かわったりしているけれど、なんとなく、そのやくめをねがう。

きをつけていると、ほかのふれんずたちも、いなくなってはちかいこがあらわれる。

ひまるはそれは、ホシノキオクだとおもう。

くりかえし、くりかえし。

ホシノキオクをひきついで、かわらないもの、かわるもの。

とってもふしぎ

 

ひまるはずっとちょうろうなのかな。

それとも、ひまるはかわれるのかな。

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ひまると、さんどすたーと、さんどすたーろう

さいきん、せるりあんのこえがきこえる。

ふれんずだけをたべるてんてきなのに、おなかがすいて、さみしくて、かなしいこえでないている。

たおされなければずっと、いつまでもさまよいつづけている。

 

それは、まるで、まるでふつうの、うえたどうぶつみたいだ。

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かざんからふりそそぐさんどすたーが、ふれんずをふれんずでいさせてくれる。

 

あのいくねんかのあいだ、わたしたちはみんなでがんばって、とてもうまくせるりあんにたいしょできた。

そうして、しまにふれんずがふえた、いくねんかご。

…さんどすたーがたりなくなった。

よわったり、もとどうぶつのすがたにもどりそうなこもいて。

 

ねぇ、まさか、せるりあんでさえしょくもつれんさなら。

だとしたらわたしたちは、このしまは。

でもあきらめて、ほうっておくことなんてできない。

いやだ。

 

でも、しょくもつれんさのことは、だれにもそうだんはできなかったんだ。

そしてだれにも、どうすることもできず。

なんじゅうねんかがすぎて、ふれんずさんのかずはもとにもどった。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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ふれんずのこと、せるりあんのことをもっとしらべよう。

としょかんで、はかせとじょしゅにいろいろおしえてもらう。

 

それから、もっとたくさんしらべるには、ほんをよむしかないみたい。

ほん。

ほん、とは、ひとがつくったもじのかたまり。

たくさんのちしき、きろく、きおくがとじこめてあるんだって。

もじをおしえてもらって、としょかんのほんを、どんどんよむ。

はじめは、えほん、まんが、ものがたり、さいごにはじしょ。

じしょ、はたくさんのもじがつながっていて、しらないことをしらべられる。

じしょをつかって、あたらしいもじも、おぼえる。

 

ほんは、やまのうえからとおくをみることに、にている。

しらなかったこと、ふしぎなことがたくさんみえるようになる。

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じゃぱりぱーくちょうさきろくし、によると

このしまは、あるときふんかして、うみのなかからあらわれたんだって。

そして、ふれんずたちもそのときからあらわれた。

どうぶつに、ひとのとくちょうをかけあわせた、あにまるがーるたち。

 

さんどすたーは、ふれんずをうみだす。

さんどすたーろうは、せるりあんをうみだす。

しまのちゅうおうにあるかざんから、さんどすたーも、さんどすたーろうもふりそそぐ。

それをけんきゅうするしせつもつくられたらしい。

 

しまのそと、にはたくさんのひとがいたけれど、おそろしい、だいいへん、がおきてみんないなくなったみたい。

しせつだけをぱーくにのこして。

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ふれんずさんのいきかた、せいしつは、もとどうぶつににている。

せいかくのちがいはあるけれど、からだのとくちょうはもとどうぶつと、にかよっている。

いきているどうぶついがいにもそのいぶつ、さんどすたーがあたったかみのけやほねからもうまれてくる。

ときにはいないはずの、そうぞうじょうのどうぶつもいた、らしい。

 

せるりあんはもっとふしぎ。

けんきゅーによれば、せるりあんはむきぶつ、なくなったしせつ、そんななにかのすがたをうつしとっている。

せるりあんのなかみはほんものとはぜんぜんちがって、いしや、みずのかたまりだ。

へしをこわされないかぎり、なおったり、ぶんれつしたり。

こわすには、つよいさんどすたーのかがやきをぶつけ、ついしょうめつさせること。

ときにはふれんずたちとそっくりのせるりあんも、いたらしい。

そしてせるりあんは、いまではこのしまにしかいない。

 

かのじょら、かれらがどこからくるのか、なにをしたいのかはわからない。

ただ、せるりあんはふれんずだけをねらって、もとどうぶつのすがたではきだす。

そのときふれんずは、たいりょうのさんどすたーと、きおくがうばわれる。

いっしょにすごしたおもいではうしなわれてしまう。

ただ、もとどうぶつにもどるだけで、しぬわけではないらしい。

さんどすたーや、きおく?をたべているのかな。

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ほんにかかれた、ながいながいれきし。

いでんと、しんかのこと。

 

この、おおきなほしにおきた、いくつものきこうへんどう。

むかしいた、たくさんのどうぶつ、しょくぶつたち。

なんどもおきた、だいぜつめつ。

それでもうまれた、ちいさなちいさないきものは、いでんしのこうかんをくりかえした。

そしてながいじかんをかけて、いまではせかいをおおいつくしている。

すべてのいきものは、いでんしのはこぶね。

 

いきものがいきていける、ばしょはとてもすくないこと。

そらのほしのは、とてもとおく、そしていきものがみつかっていないこと。

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としょかんのほん、ぜんぶよんじゃった。

でも、このしまのこと、さんどすたー、さんどすたーろう、ふれんず、せるりあんのことはあまりわからなかった。

まだけんきゅうがすすんでいないみたい。

としょかんのおくにある、けんきゅうしつ、ならもうすこししりょうがあるのかもしれない。

 

いろいろとわかったこともある。

このしまはこのほしのなかで、とても、とくべつだということ。

たくさんのおおきなちいきをちいさく、とじこめたように。

さんどすたーがそれをいじしているらしいことも。

 

だからふれんずが、しまのそとにでることはむずかしいみたい。

さんどすたーがなくなって、もとどうぶつにもどってしまうんだって。

 

そして、さんどすたーろうとせるりあん。

ふれんずたちをねらっているなにか。

おなじかざんからふきだしてくるなにか。

 

そのけんきゅうがすすむまえに、だいいへん、がおきてひとはいなくなってしまった。

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としょかんのおくに、ぱすわーどでまもられたとびらがあった。

なんどもしっぱいをくりかえしたけれど、ほんにちいさくめもされたことばだった

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こんなんをのりこえ、いつかさんどすたーのもとへ

わたしのしっていることばにもにている。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

 

そこはじゃぱりぱーくにつくられたけんきゅうしつ。

___はかせとよばれるひとりのてんさいが、あにまるがーるたちと、せるりあん、さんどすたーと、さんどすたーとさんどすたーろうについてしらべていた。

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ひまるはとてもいろんなことをおぼえたけれど、はかせやじょしゅみたいに、うまくあどばいすできないんだ。

しっていることと、それをつかえることはべつ、みたい。

ちょうろうだけどりーだーにはなれないね。

 

ひや、どうぐのこともわかったけれど、ふれんずさんたちは、みんな、てのとどくはんいのことでじゅうぶんまんぞくしているし。

ひまるにはなにができるのかな。

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ひまるはさんどすたーと、さんどすたーろうのことをずっとしらべている。

 

としょかんのふかいそこ、けんきゅうしつ。

としょかんのしりょう、なかでもおくのほうに、たばねておかれたむずかしいかみたば。

 

けんきゅうしりょうによれば、ほねにさんどすたーがあたり、ぜつめつしたはずのふれんずがあらわれたことがある。

そして、そのこがせるりあんにたべられると、いきた、もとどうぶつがあらわれたらしい。

ぜつめつしたはずのどうぶつをさいげんできるかのうせい。

…ただしあにまるがーるはうしなわれてしまう。

 

くろいもやもや、ひかりをすいこむ、さんどすたーろう。

さんどすたーとにたけっしょう、しかくいかたまり。

それは、さんどすたーとおなじかざんからやってくる。

 

さんどすたーろうにふれてみると、とてもかなしい、せつないきもちになる。

ひまるは、さんどすたーろうを、このかんかくを、しっているような…。

ただこのかんじょうだけではなくて、ずっとむかしにどこかで。

でも、おもいだせない。

 

ふれんずさんたちはだれも、さんどすたーにも、さんどすたーろうにふれることはできない。

かたちがあるし、なにかにぶつかるのに、さわれないふしぎなそんざい。

ひまるだけがそれにふれられる。

ひまるも、せるりあんとおなじぐらい、ふしぎだ。

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さんどすたーのおおいとしは、さんどすたーろうもおおい。

どちらも、しまのかざんからけっしょうになってふきだしてくる。

どうなっているかしらべてみたい。

かざんはせいいきだけれど、ちょうろうならはいってもいいんだって。

 

かざんのかこうをおりていく。

がけをうろうろするのは、とってもとくいなんだよ。

おくふかくに、なにかがいるきがしたけれど、きのせいかもしれない。

かざんのおくはとてもあつくて、とてもそれいじょうはすすめなかった。

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あるとし。

おおきなせるりあんとたたかったひまるは、にげおくれたふれんずさんをかばって、ばらばらになりそうな、おおけがをした。

とてもいたくて、それから、ゆきのおくよりもずっとつめたくて、みずうみよりふかく、くらくておもいかんかく。

これがしぬってことなんだろうか。

ふれんずさんたちをたくさんしんぱいさせてしまった。

でも、まよなかにはせるりあんもたいじできたから、よかった。

 

そうして、よるがあけるまえには、ひまるのけがは、なんともなくなっていた。

ふれんずのおおけがが、いつかそのうちなおることもあるし、よくわからないけど、さんどすたーのせいなんだろうってみんながいった。

それに、ひまるはちょうろうだから、とくべつなのかもしれないって。

 

でも、ほんとうは…。

おおきなせるりあんをたおしたとき。

はてしない飢えと、くろいさみしさ、こわいなにかが、ひまるにあつまってきたことは、いいだせなかった。

だって、くろい、まっくろいあのけっしょうは。

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せるりあんはひまるにむかってこない。

それどころかひまるをすどおりさえする。

ひまるがこうげきしても、はんげきしてこない。

でもひまるは、やせいかいほうがとてもよわい、から、せるりあんをたおすこともむずかしい。

 

それに、せるりあんのひめいがとてもにがてだ。

いまでは、はっきりとこえになってきこえる。

「いやだ」「こわい」「やめて」「さみしいよ」「くるしいよ」

 

にくしょくどうぶつたちは、ほかのどうぶつをたべるときにへいきなのだろうか。

ふれんずたちもおなかがすくけれど、じゃぱりまんがある。

ひまるのきになることが、またあらわれる…じゃぱりまんって、なんだろう。

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ひまると、こうじょう

じゃぱりまんのこうじょうがあった。

ぼすたちはたちいりきんしだっていうけど、おねがいしたらとおしてくれた。

やさいをそだてるはたけ、はたけをたがやすきかい。

ひりょうと、みずもかんりするためにはたらくぼすたちと、おおきなきかいたち。

にくは、まめやいもから、たんぱくしつ、をとりだしてうまくつくられている。

こうじょうで、じゃぱりまんはつくられている。

ひとののこしたこうじょう。

ここがぱーくをささえているんだ。

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こうじょうのこんとろーるるーむ。

たくさんの、しりょうがのこっていた。

ぼすはふれんずでも、どうぶつでもないみたい。

ひとが、しまにのこした、じりつがたろぼっと。らっきーびーすと。

かれら、かのじょらはぱーくにいて、ふれんずさんたちのためにはたらいている。

ぼすのこうじょうでは、ぼすのしゅうりもされている。

ぼすがぼすをしゅうりする。

あたらしいぼすがうみだされる。

いきものみたいだ。

いろんなしりょうがのこされていて、ひまるは、ずいぶんとぼすたちのことにもくわしくなった。

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ぼすは、ろぼっとだから、こころがない。

ほんとうかな?

いきもののようにうごくようにみえて、それはぷろぐらむという、つくられたものらしい。

ひまるには、こころのあるいきものにしかみえないんだよ。

ぼすはふれんずにはせっきょくかんしょうしないように、ぷろぐらむ、されている。

しまのせいたいけいをくずさないように、しぜんのすがたであるように。

せるりあんのたいおうだけはすこしとくべつで、おおきないへんがおきたときにはたいしょするようになっている。

でんせつのしゅごけものさんみたいだ。

ひとののこした、ぱーくのしゅごけものさん。

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いろんなふれんずさんたちのちえと、せきがいせんしかく、ちょうおんぱ、ちょうていしゅうは、ちょうかんかく、ひまるにはないいろんなちからをかりて。

せるりあんやふれんずさんのことをしらべたけど、ぜんぜんわからない。

ただ、せるりあんのこえが、こえとしてきこえるのはひまるだけみたい。

こうもりさんや、いるかさん、もっとずっと、みみのいいふれんずもいるんだけど。

 

せるりあんは、ひまるをとりこもうとしない。

せるりあんにふれていると、まるでだれかにふれているようにあたたかい。

だからちいさなせるりあんなら、ほうりなげたりして、なんとかできるようになった。

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いろんなさんどすたー、さんどすたーろうのかがやきをみていたら、どこかへながれていくのが、ぼんやりみえるようになった。

かこうからやってきてひろがり、ふれんずや、せるりあんのもとにとどまり、かわのながれのようにだんだんあつまって、しまのはし、ちょうどかざんのはんたいがわの、おおあな、にながれこんでいる。

かざんとおなじで、あのおおあなにはなにかがある。

 

おおあなはまっくらで、そこはしれず。

みんなは、すごくおおあなをこわがっているから、ここにちかづけたこもすくない。

みているだけで、ほうこうかんかくがくるうんだって。

ひまるだけはなんともない。

 

おおあなのそこはどうなっているんだろう。

いってみようとしたけれど、みんながあんまりとめるのでやめておく。

おおあなをみていると、とてもふかくに、めがくらむような、おおきななにかがいるようなきがする。

みんなきのせいだっていうんだけどね。

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ふれんずたちのかがやき、さんどすたーはいつかあつまり、ホシノキオクのもとへいくというでんせつがあるんだ。

いっしょうけんめいいきること、そのあかし、ホシノキオクはそんなかがやきのあつまりらしい。

ホシノキオクにはいろんなおもいがあつまっている。

それはうけつがれる、たとえしんだとしても。

 

このでんせつは、ただのおはなしではないとおもうんだ。

ふれんずさんたちに、きおくはすこしづつうけつがれている。

さんどすたーでふれんずかして、うまれたばかりでしらないはずなのに、おぼえていることもある。

ほんのすこしづつかわっていく、ホシノキオクもわたしたちのいちぶ。

それがわたしたちふれんずの、いるいみなのかな。

 

ホシノキオクにつつまれてあれ。

なぜかしっていたこのことば。

いつかひまるもそうなるのかな。なってほしいなぁ。

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ふれんずさんのしをみとったとき、かがやきがほそいいとをひいて、ひまるのなかをとおっていったんだ。

たくさんのおもいでと、あたたかいかんじょうたち。

それは、きっとおおあなのそこの、ホシノキオクのほうへながれていった。

いろんなふれんずにみおくられ、たぶんかのじょはしあわせだったとおもう。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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せるりあんがしんだとき、くろいもやがほそいすじをのこして、ひまるのなかをとおっていった。

くるしいからだと、たくさんのかなしいきもち。

ずっとうえて、ふれんずにおいまわされ、さいごにはこわされる。

ひまるはただねがう、かのじょらもどうか、いつかは、しあわせに。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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ふれんずさんたちから、きんいろのいとがみえるようになった。

せるりあんからは、くろいろのいとがみえるようになった。

しょうひされたさんどすたーも、さんどすたーろうも、いとをたどって、おおあなへ、おそらくは、ホシノキオクのもとへながれていく。

 

よくみると、ひまるにもいとがつながっている。

きんいろのいと、それから、みたくはないけどみえる、それは。

くろいろのいと。

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いとは、かざんからひまるへ、ひまるからおおあなにつながっている。

としょかんでしらべごとをしていて、くろいいとをつい、じっとみていたら。

ひまるはいつしか、とてもかなしくなってしまった。

かなしい、くるしい、さみしい、いてほしい、だれか、そんなきもちが、どろのように、せきたんのように、いわのようにかたまっていく。

 

それで、くろいかがやきが、ひまるからもれた。

おおがたのせるりあんがもっている、もやもやとしたくろいろの、かがやき。

とてもこわい。

いやだ。

それはながいじかんをかけ、おさまった。

はかせとじょしゅは、このことはひみつにしてくれるみたい。

そのめがおびえていても、しかたのないことだとおもう。

ふれんずたちのちょうろうが、せるりあんかもしれないのだから。

 

どうしてくらいきもちになったかは、よくわかってるんだ。

みんな、みんな、ひまるをおいて、いなくなってしまう。

それに、さんどすたーと、さんどすたーろうとで、できたひまるは、いったいなに。

やっぱり、こわいなぁ。

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くろいかがやきがでたまま、ふれんずさんにふれてしまった。

あたたかいかんじょうがながれこんできた。

ふれんずさんはきゅうにとってもつかれたみたい。

さんどすたぁを、うばいとった。というじっかんがある。

これは、せるりあんの、ほしょくだ。

 

そのことをひまるはだれにもいえなかった。

ひまるは…まだふれんずなんだろうか。

それとも、ひまるのどこかに「へし」があるんだろうか。

たしかめるのがこわい。

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このままではいけない。

いとから、ずっとはなれたらどうなるだろうか。

しまのそとにいってみたけれど、ひまるにはかわりがなかった。

ひまるは、もとどうぶつにもどったりしなかった。

せるりあんでも、さんどすたーろうがたりなくなってくずれるのに。

ひまるは、きんいろと、くろいろのいとがとおく、しままでつながっている。

 

しっていたけれど、しまのそとの、たいりくには、ふれんずさんたちはいなかった。

さんどすたーのかざんがないからだ。

 

でもひまるだけは、とおくはなれても、さんどすたーも、さんどすたーろうも、つかえている。

ひまるは、たぶんせるりあんでさえ、ない。

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せるりあんから、さんどすたーろうをうばいとれた。

なぜかできるきがした。

これをつかえば、せるりあんをたおすこともできるとおもう。

でも、ながれこむかんじょうにのみこまれてしまいそうだよ。

それに、うばわれるせるりあんのひめい。

「やめて」「ゆるして」「たすけて」

ひどいこえをあげて、まるでたべられるどうぶつだ。

 

にくしょくどうぶつは、こんなひめいにたえられるんだろうか。

しょくぶつだっていきているから、ひめいをあげているんだろうか。

いきることはいのちをうばうことでもある。

 

やせいはすばらしく、そしてざんこくだ。

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ひまるはなにをのこせるの。

ひまるがいることに、いみはあるの。

なぜ ひまるだけがずっといきているの。

 

なんどくりかえしても、わかれにはなれない。

たくさんのじかんがあっても、おわかれのじゅんびはちっともできない。

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やまをのぼるさきにはいつか、ちょうじょうがある。

ちょうろうをがんばるのも、のぼりつづけたおわりはあるのだろうか。

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きき、にたいしょするのもなんびゃくどめだろう。それとも、いくせんなのかな。

きみにであったのはきのうだっただろうか。

わかれたのはおとといのことだったのかな。

それとも、ずっとむかしのことだったのかな。

ひまるのからだはかわらないのに。

ちしきはのこっているのに、きおくはまざっていく。

せめておはかにもじをきざみ、いつまでも朽ちないやまのうえにのこしていく。

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ときどき、くろい飢えと、冷たいさみしさがひまるをさいなむ。

ふれんずたちのあたたかいかがやきにふれたい。

そして、とりこんで、しまいたくなる。

いやだ。

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せいいき ひまるとししんさんたち

やまのうえから、しまをみまもっていた、そんなあるひ。

しらないばしょから、ふしぎなさんどすたーのたちのぼりをかんじた。

こんなにやまのうえからみているひまるの、しらないばしょがあったなんて。

 

しらないもりにまよいこみ、たくさんのおおきなとりいをくぐりぬける。

たくさんのわかれみちと、くちたおやしろたち。

でも、もくてきちはわかる、ふしぎなかがやきのあるほうへ、ほうへと。

そうしたら、でんせつのせいいきにたどりついた。

 

「今は、結界を全て閉じてあるはずだが」

「なんだこの弱そうなのは」

「まさか、自力ですり抜けてきたのかな」

「でもこの子、ふれんずなの?」

そして、ながいじかんをいきるふれんずさんたちにであった。

しゅごけものさんたちだ。

かのじょたちは、ししんさん。

すざくさん、びゃっこさん、げんぶさん、せいりゅうさん。

ひまるのことは、ちょうろうということはしっていたみたい。

でもひまるがなぜ、ながいきするのか、しなないのかはよくわからないみたい。

「この感じ…何処かで見たような気がするのだが…すまぬ、思い出せない」

「肉体の感触…ふれんずのようでは…あるんだけど」

「だがせるりあんというかんじも…すこしするよね」

「麒麟様の雰囲気とも 似ているようじゃないの」

なんとなくわかっていたけど、せるりあんなのはやっぱりいやだなぁ。

 

でも、せるりあんのようにふれんずをたべるつもりがないんだから、それでいいんだって。

ながいれきしのなかでは、せるりあんとともだちになったこもいたらしい。

そうかなぁ、そうなのかぁ。

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ししんさんたちは、ほとんど、ぱーくをただみまもっている。

おおきなちからをふるうことは、ふれんずたちにもがいをなすことだ、って。

…かんたんにたすけることは、ふれんずたちのかがやきをうばってしまうんだ。

ただまもるだけではいみがない。

それはもう、たくさん、なんども、おもいしったから、しってる…。

「それでも、そなたが諦めたくないのなら」

「いまだなお、願うなら。ホシノキオクに強く願うことだ」

「いつか必ずそれは応えるだろう」

ひまるは、ふれんずさんたちとのひびをあきらめたくない。

 

ししんさんのうちだれかがこういったんだ。

「あなたの、望むようにしてみなさい」

ひまるの、のぞみってなんだろう?

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「じぶんじしんをよく知ることだ」

と、せいりゅうさんがいったよ。

ひまるのからだのこと、ひまるのこころのこと。

ししんさんたちが、いろいろしゅぎょうをしてくれることになった。

「ここへやって来られたという事は、その資格があるということなのだ。」

でもきびしいしゅぎょうになるんだって。

だいじょうぶ、ひまるはのぼるのがとくいだから。

よいしょってどんなやまものぼっちゃうよ。

 

すざくさんのみたところ、ふれんずで、せるりあんで、ひとで、どうぶつだって。

ひまるはすごいざっしゅだね。

 

ひまるはいきをしなくてもへいき。

くるしくなるきがするのは、きのせいだった。

ひまるはねむらなくてもへいき。

そういえば、なんにちもおきたままほんをよんでいたことがあるよ。

ひまるはごはんをたべなくてもへいき。

おなかはすくんだけど…。

たぶん、さんどすたーか、さんどすたーろうを、どこかから、たべている。

ひまるのちにくは、ほとんどがどく。

いきものやしょくぶつにあたえると、とてもよくない、もうどくだ。

ふれんずさんたちにとっても、せるりあんにとってさえも。

 

ひまるのみえているいとは、ししんさんたちにもみえないんだって。

ししんさんたちにつながっているいとは、きんいろににていて、いろんないろにかがやいてる。

 

しゅぎょうはたいへんだけど、たのしい。

ひまるはがんばりやさんなんだって。

そうなのかなぁ。

ひまるは、のぼるのがたのしいからね。

 

ひまるのちしきは、なんだかすごいことになっているんだって。

そういえばとしょかんのほんも、ほとんどおぼえてる。

でも、それをつかうのは、あんまりじょうずじゃないみたい。

たくさんえらべることがあると、まよっちゃうし。

とくに、どれがいいことか、なんて。

それがほんとうによかったことかなんて、ぜんぜん、わからない。

ふれんずさんたちのことも、うまくおもいだせないし。

 

ひまるのちからは、ごくふつうのふれんずさんよりよわい。

しかもやせいかいほうがへただから、ひまるはとてもよわい。

さんどすたーをかがやかせても。

くろいかんじょうにみをまかせ、くろいもやをだしても。

うごきがどんくさいんだって。

こうげきするということは、にがてだなぁ。

 

ひまるのくろいもやは、げんぶさんのまもりもかんけいなしに、まもりごとのみこむ。

げんぶさんは、まさかの、こうらがすこしかけてしょっくをうけている。ごめんなさい。

こうらは、ながいとしをへた、えだのあじがした。

 

ひまるはさんどすたーをつかって、ほそいいとをのばしてなにかにさわれる。

なかみをうごかしたりはできないけど、どうぶつやふれんずさんのなかにも。

としょかんでまなんだように、いろんなないぞうがあるのがわかる。

まるでそれをみているみたいに。

でも、とってもくすぐったいんだって。

おいしゃさん、になれるかなぁ?

 

ひまるはさんどすたーろうをつかって、ほそいいとをのばしてなにかにさわれる。

なかみをうごかしたりはできないけど、きかいや、ほんのなかみがわかる。

としょかんでまなんだように、いろんなしくみがわかる。

まるでそれをみているみたいに。

こわれてしまったぼすをなおすこともできた。

 

ひまるは、どこまでのことにたえられるんだろうか。

たとえなかのなかまで、こおりついてとまっても。

たとえかみなりをみにうけ、さいぼうのひとつまでしのうとも。

たとえいくじゅうに、ぶんかつされても。

たとえほのおに、かけらまでやきつくされようとも。

ひまるはよみがえる。

さんどすたーか、さんどすたーろうか、そのどちらかをあつめ、もとにもどる。

ずも、ずももも。

ししんさんたちが、ちょっと、いや、だいぶやりすぎちゃったかな、とおもうほどしなない。

 

ひまるはいろんなことがみえているみたい。

びゃっこさんのすごいふぇいんともぜんぜんかんけいなくて、もっとすごいはやさで、まわりぜんぶをみているんだって。

はやさとわざにじしんがあったびゃっこさんは、しょっくをうけている。

もとどうぶつのとくせいもあるのか、しかいがおそろしくひろいんだって。

「まいった、見るとはなしに、全て観るのなど武術のごくいだぞ」

「おまえ何処かで何か、とっくんでもしてたんじゃないのか?」

「きみはもしかして、上から見下ろすように自分がみえないか?」

「でもひまるは、みえるわりには全然うごけてないわ」

そういえばひまるは、やまのうえからみんなをたくさんみまもってたんだ。

めをじっとこらしたら、やまのうえから、ふれんずさんのようすがわかる。

さすがにうえからじぶんをみおろせないけど、ひまるいがいはぜんぶみえてるかも。

ひまる、こんなにめがよかったんだねぇ。

 

ししんさんたち、よにんのこんびねーしょん、ぜんりょくでうごいてもみえる、それはすごいことだって。

まぼろしも、ほのおのむこうも、やみのむこうさえ、ぶんしんとほんもののちがいも。

みえても、こうげきをよけられるわけじゃ、ないんだけどね。

ひまる、ぱっとうごくのはぜんぜんとくいじゃない。

そういえば、ふれんずさんたちのうごきも、せるりあんのうごきも、いとをよくみているとなんとなくわかるよ。

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しゅぎょうして、つえでちからをうまくながすことはおぼえられた。

よけるのはあんまりじょうずにならない。

ひまるは、ひまるのことみえないんだもの。

 

そして、ししんさんたちのしゅぎょうで、ひまるがおしえることもある。

としょかんのほんと、いろんなおもいでのなかで、ぶじゅつのかたちとか、たたかいかたをたくさんしってる。

もっとこうりつのいいうごき、ちからのむだ、さんどすたーのかがやかせかた。

みて、おしえるだけなら、だれよりもじょうずだってほめられた。

うれしい。

 

でも、ひまるはたたかうと、たいしたことない。

うけながすだけなら、ししんさんよりもすごいんだけど。

うけながせないひろさで、ざっくりとどーんってされるとどうにもならない。

こうげきも、まよいがぜんぜんきえないんだ。

 

ひまるはどちらかといえば、しじをだすのがとくいなふれんずなんだって。

それから、ふれんずさんたちをきたえること。

しじをだすってことは、こわい。

ひまるにみをまかせてもらうことだから。

でも、おおかれすくなかれ、やくにたとうとすればせきにんをおうものなんだって。

そういえばひまるはちょうろうだった。

ひまるは、いいちょうろうに、なれるんだろうか。

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ししんさんにうたと、おどりもしゅぎょうでならっている。

しじをだすならひつようになるって。

はーもにー、みなにあわせるきもち、みなをひっぱるきもち。

そのちょうわ。

ひまる、はーもにーはとてもにがてだなぁ。

これでいいのかな、こっちかな、どうかな、いろいろかんがえすぎだって。

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くろいかがやきをおさえることにもなれた。

かなしさにのみこまれないように、いまとみらいをだいじに。

できるなら、わるいことはあんまりかんがえないように。

ほんのすこしだけ、さんどすたーもつかうのがじょうたつした。

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なんぜんども、なんまんどもききがあって、へいわなじだいがあって。

ひまるはすこしは、やくにたっているのかな。

はーもにーも、ほんのちょっとだけじょうたつした。とおもう。

そうだんにもすこしだけ、なれて、わからないときはみんなでおはなしして。

ちしきは、はかせとじょしゅのおてつだい。

そして、たくさんたくさんの、わかれはいつもかなしい。

すぐにわかれがくること、だれよりしっているのに。

せっかくであったふれんずさん、あなたはすぐにしんでしまう。

せっかくできたおもいでも、ひまるはすぐにわすれてしまう。

 

かぞえきれないおはかをみたときだけ、ぼんやりときみをおもいだす。

ときどき、ふりつもったかなしさで、くろいかがやきがこぼれそうになる。

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ひまると、あんしあ

ひまるはあるとき、ふぶきがやむまでほらあなのなかにかくれていた。

たくさんのゆきがそらにまっているのをみるのはすき。

 

そしたら、だれかがひまるのゆびにかみついてきた。

ちいさなゆきひょうだった。

ゆびをいっしょうけんめいにかじって、そのこは、はいた。

ひまるのからだは、だれかがたべることもできない。

 

どうくつのおくには、おおきく、りっぱなゆきひょうと、おなじくらいのわかいひまらやたーるがしんで、こおりついていた。

はらのあたりにおおきなきずがあるのは、ひまらやたーるにさされたのだろう。

どちらもりっぱにたたかったはず。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

 

ちいさなゆきひょうは、なんどもひまるにかみついて、だんだんよわっていく。

ひまるは、それをほうっておくこともできたけれど、いきようとしているいのちをみないことにするのは、いやだ。

せめて、てで、ゆきをとかして、みずをあげることにする。

それから、こおりついたひまらやたーるのにくをいただいて、とかす。

 

ふぶきはあけた。

ゆきひょうのこは、ひまるについてくることにしたらしい。

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たべものがなくなるまえにこのこのたべものをよういしてあげなくちゃ。

きばもあるし、おちちをあげるきかんはもうおわっている。

たしか…いちねんくらいではすだつはず。

 

やまをおりてじゃぱりまんをとりにいこうとして、でも、ひまるのあしはとちゅうでとまってしまった。

 

そうだ、ぼすはふれんずにしかじゃぱりまんをくれないんだ。

ぼすたちはそういうふうにうまれている。

だからあのこをそだてるなら、にくをいまはよういしてあげなくてはいけない。

これはだれかにたのんでいいことではない、ひまるがそうすべきことなんだ。

 

かりもおしえてあげなくてはいけない。

うまくできるだろうか、いや、しなくては。

あそこでたすけることをえらんだのはひまるだ。

しばらくのあいだ、ひまるはゆきひょうでいなくては。

 

ちゃんとかんがえたつもりでいたけど、わかっていなかったのかもしれない。

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なついてもらうのに、ははゆきひょうのけがわをもらう。

のこりは、やまからおろして、おおきないわのうえにもっていく。

ちいさくきざんでほねまでくだいていわのうえにおく、ちょうそうというんだ。

すかべんじゃーがたべるかもしれないけれど。

ひまるはいつもだれかをおくるときはそうしてるんだ。

ちいさなこはおとなしくそれをみていた。

 

けのひとたばをあみこんでいとの、かざりひものいちぶにする。

そうしたらおぼえておけるようなきがして。

 

しんでいたたーるの、のこったほねとかわはくだいて、やまのしたのほうのかわにおいておく。

そうすればだれかがたべるだろう。

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とうとう、どうくつのなかのたべものはつきようとしている、ひまるがどうにかするひがきた。

やまをおりて、みつけたのをかるときめて、あるいていく。

しずかにふるゆきのなかにいたのは、ひまらやたーるだった。

ひまるは、ほかのえものをさがすこともできたけど、そうはしなかった。

 

なにかにきがついたのか、そのたーるはにげだした。

だからひまるはおいかけて、やすんでいるところを、しとめた。

どうして。

どうして。

そういっているこえがきこえた。

ひまるはなにもいわなかった、いえなかった、なにも。

 

くさらないようちぬきをして、ちいさなこのまつどうくつへかついでいく。

とてもおもたかった。

ひまるのてはずっとふるえていた。

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けがわをしたてて、なんどかにくをあげてからは、すぐにひまるになついた。

ゆきひょうのこには、あんしあとなづけた。

かみと、けがわにうもれてねむる。

 

かみのいちぶを、ながくたばねて、しっぽのようにしたらうごかせた。

そういえばふれんずのからだは、かなりがさんどすたーゆらいらしい。

ししんさんたちのすがたをかえるのも、さんどすたーをうまくあつかうことだった。

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おぼえてもらうことはたくさんある。

ふゆでもこおっていないみずのみつけかた、あんぜんなゆきのあるきかた、ふぶきのさけかたをおしえる。

きののぼりかた、がけののぼりかた、おりかた。

においのけしかた、てきからのにげかた。

ゆきひょうはおおおきいけれど、それをかるとりや、おおかみのむれもいる。

えもののみつけかた、ゆきのなかへのひそみかた。

それからしとめかた、とったえものをくさりにくい、あんぜんなばしょまではこぶほうほう。

 

あんしあはとてもかしこい、おしえたことをどんどんまなんでいく。

じぶんでちいさなのうさぎをとって、じまんげにみせにきたので、たくさんほめてあげる。

あんしあは、とったえものの、いちばんたべやすいぶぶんを、ひまるにたべてほしいという。

えらいね、すごいね、おいしいよ、あんしあ。

ちのしたたるにくのあじは、よくわからなかった。

ひまるは、うまくわらえていただろうか。

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ふれんずたちのうわさによると、こうざんちほーに、おおきな、おそろしい、つののあるゆきひょうがでるんだって。

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あんしあにであってからつぎのふゆがきて、じゅうぶんにおおきくなった。

おしえることはもうほとんどないとおもう。

 

いまでもははばなれができなくて、ねむるときにはひまるのしっぽをがじがじする。

ひまるのしっぽのさきはいつもかぴかぴしている。

もう、ずっといっしょにいるわけにはいかない。

このふゆがおわって、はるがきたら、わかれよう。

ほかのゆきひょうとつがいになれるかは、あんしあしだいだ。

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ふゆの、すみわたった、めずらしくかぜのないよるのこと。

あんしあにさんどすたーがあたって、ふれんずになった。

 

ほんとうのははおやでないことを、つたえた。

けれど、あんしあは、ひまるのことをしたってくれる。

「それでも、ひまるのことは、母上と呼んでもよいかのう。」

それは…かまわないよ、あんしあ。

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あんしあにたずねられた。

「のう、母上、どうしてわしを育てたのじゃ。母上は、その…ユキヒョウではないのじゃろう。」

あのひ、そとはひどいふぶきだった。

ひまるは、ふぶきをさけてどうくつにいたんだ。

そしたらひまるのゆびに、かみついてかじろうとするちいさいあなたがいたんだ。

そのどうくつには、けがをしてしんだゆきひょう、あなたのうみのおやと、しんだヒマラヤタールがいたんだ、たぶんたたかったんだろうね。

しんだにひきはかちかちにこおりついてたよ。

あんしあはやせほそって、もしほうっておけばすぐにしんだだろうね。

それで、さむさにこごえて、こわがりながらも、ひまるのゆびにいっしょうけんめいきばをたてるあんしあを、ひまるはただしなせたくなかったんだ。

だから、そこにいたひまらやたーるのにくを、とかしてあなたにあげたんだ。

そうして、あなたがきちんとえものをとれるようになるまでは、そだてようとおもったの。

「言うておることはわかる、わかるが、ヒマラヤタールを狩ることは…良かったのか」

そうだね、いやがるこもいるとおもう。

でも、そだてようとしたのだから、きちんとゆきひょうでいてあげようとおもったんだよ。

ほかのどうぶつをかって、たーるをからないということはしたくなかったの。

 

あんしあはながいあいだかんがえて、ひとことだけひまるにいってくれた。

「母上、きちんと育ててくれてありがとう。」

そうおもってくれていたら、よかったな。

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あんしあは、だれかがいるときはひまるとよぶんだね。

ふたりのときは、ははうえなんだって。

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ひまるのことを、あんしあはたくさんききたがる。

とおい、ずっとむかしからいきていること。

なぜかしなないこと、みんなしんでしまうこと。

としょかんのほんをぜんぶおぼえていること。

なにかのやくにたてたらいいなとおもって、ちょうろうをしていること。

 

あんしあは、たくさんほんをよんでいる。

なにかひまるのおてつだいがしたいんだって。

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かざんのふんかが、とてもちかよれないぐらいにはげしい。

しまのきこうがおかしい。

さんどすたーのちからで、えりあごとにわかれていたはずの、きこうがあいまいになっている。

さばくにゆきがふったり、こうざんにあついひざしがふりそそいだり。

かんきのさばんなに、おおあめがふったり。

ししんさんたちによると、さんどすたーのしゅつりょくがあんていしないらしい。

ふれんずさんたちにもそうだんされるけれど、ひまるにもわからない。

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じゃぱりぱーくのおわり

どうしよう

どうしよう

しまが!しまが!

おおきなふんかとともにしまが、しずんでいく。

どうしたらいいの。

ししんさんたちは、つよいちからゆえに、しまからうごけないんだって。

うんめいをともにするしかないんだって。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

 

かざんからふきあがるくもが、あらしをよんでいるのだろうか。

ちくちくとはだをさす灰がまじった、くろいあめ、ゆきがふっている。

うみのごきげんもとてもよくない。

どうすればいいの。

とべるこたちはにげられるだろうか、ひどいあらしだよ。

およげるこたちはなんとかにげられるだろうか、うねるうみをどこまでおよげるかな。

およぎがとくいでないこをかかえて、たすけあってとおく、うみをこえられるだろうか。

それでは、ぜんぜんたりない。

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だからひまるはふねをつくった。

ふれんずさんたちのちからをあわせて、ぼすたちもてつだってくれて。

きをけずり、くみああせ、どうにかふねをつくった。

しまのきかいをぜんぶ、ぶんかいして、どうりょくもつんだ。

ふねはぶじにうごいてくれるだろうか。

たくさんのふれんずさんたちをのせるには、あまりにちいさなふねに、のせられるこだけをのせて。

できるだけのしょくりょうと、みずをのせて。

ひまるはちょうろうだから、ふねのせんどうさんだって。

しまのそとにもいったことがあるから、ひまるのやくめだ。

まかせて、ひまるはしなないちょうろうだから。

 

…それから、ふれんずたちは、だいじなやくめをひまるにたくした。

だれをつれていくか、ひまるがえらぶ。

こんなおそろしいことをしなくてはいけないなんて。

でも、ほかのだれにそんなこわいことはさせられるだろうか。

むれについていけるものをえらぶのは、むれのりーだーのやることだ。

すこしは、ちょうろうらしいことをするしかない。

ふれんずたちのたかまったふあんなきもちが、ひまるのくろいいとをめいどうさせる。

そんなことにのみこまれているじかんはないんだ。

なんとか、しまのそとでもいきていけそうなこたちをえらんでいく。

いやだ、えらびたくないよ。

くじけそうだよ。

 

でも、やらなくては。

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てつだってくれていたあんしあが、ふとはなしをきりだした。

「なぁ母上、妾はここに残るよ。

 妾は外で、生きていけんじゃろう、けものにもどれば寿命も近いはずじゃ。

 けものに戻って、母上の尻尾にかじりついてもいかんしのう。ふふふ。

 …それに、な、母上の代わりにだれか、のこる子達に、長老をしてやってもよかろ。」

とてもしずかに、でもなんてかなしいえがお。

それに、こうときめたときの、とてもすんだめをしていたから。

ひまるはたくさんかんがえたけど、わかったよ、あんしあ、ありがとう、としかいえなかった。

「あの~、そうじゃ、え~えと、母上、尻尾の毛をすこしもらっても良いかのぅ…」

たくさんもっていってもいいよ、またのびるから、といったけど。

にぎれるけたばくらいしか、あんしあはきらなかった。

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あんしあはしまにとおくのころうという

ほんとうにあなたはひとりそうするのか

のこってくれと、それともつれていってくれと

ないてひまるにたのんでくれたら

 あんしあのひとみの けれども

 なんといううつくしさだろう

ひまるもちょうろうでいるから

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とうとう、しゅっぱつのひがきた。

くもにおおわれくらいけれど、このよあけとともに、ふねをだす。

たくさんのふれんずさんたちが、みなとにあつまっている。

これが、さいごのわかれになるだろうと、みんなわかっている。

しずかにすわっているこも、たくさんおはなしをしているこも、ねむっているこはひとりもいない。

 

ししんさんたちも、みなとまできてくれた。

ちいさなくびかざりと、えだのついたもものみをわたしてくれた。

「この首飾りはわれらの残った力を込めたものだから、持っていって欲しい。」

「それからね、きのうの風でこの首飾りが樹までとんで、枝と実が落ちてきたの。」

「ひまるはあの樹の枝を、ときどき食べたそうにきにしていただろう。」

「本来ならば、誰にも食べさせてはならないものだが、落ちてきたと云うことはおまえは選ばれたのだ、さぁ、食べてみせておくれ」

えだはとてもおいしかった。

なぜかとてもやさしくて、あたたかいあじがした。

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あいどるたちがいった。

みんな、うたって。おどって。おぼえているかおは、えがおにしましょう。

たくさんのふれんずたちのうたと、だんす。

あしも、こえもふるえているけど。みんないっしょうけんめいだ。

ないているこも、ささえられてわになって。

うれしいね、かなしいね、いろんなおもいがむねをこがす。

 

だれからともなく、またあおうねのおうたがはじまった。

ふるくからつたわっているうた。

「わたしたちまたあおうね

 いつかも、どこかも、しらないままに

 きっとはれたひに、わたしたちめぐりあうよ

 だからずっとえがおでまっていて

 あおぞらが、くろいくもをふきらはらってしまうまで

 

 ねぇ、わたしはあなたのおともだちに

 もうすぐあえるってあいさつをしにいくよ

 みんなもきっとよろこんでうたうから

 あなたは、わたしがいくのをみんなにつたえてね

 

 わたしたちまたあえるわ

 どこかも、いつかも、わからないけど

 きっとわたしとあなた、ほしにみちびかれる」

 

てをつないで、かたをくんで、おおきなわになって。

ひまるはうまく、わらえていたかな。

どうかみんな、ホシノキオクにつつまれてあれ。

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あんしあがぎんいろにかがやいた、ちいさなひもかざりをくれた。

「どうじゃ、きれいじゃろう、妾の一番美しい場所の毛を使ったのじゃ」

そういってふってみせる、しっぽのせんたんのけが、とてもみじかくなっていた。

ずっときれいに、ていれいしていた、じまんのしっぽなのに。

「もう、母上、おっかない顔じゃ、そんな顔をするでない。みながこわがるぞ。美しい髪もこんなにばさばさではないか。」

そういいながらあんしあは、こねこにするみたいに、かみをなめたり、なでたりしてととのえてくれた。

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髪をととのえててやっていると、母上は震えて、うなり声をあげて、涙をぼろぼろとこぼしはじめた。

泣いているところなど初めて見た。心を乱し声を荒げているところも。

ふるえて泣いている母上は、妾より小さく細い、ただのふれんずじゃった。

 

母上が妾の尾を噛むのも初めてかもしれぬ。

あぁ、母上はきっと知らぬじゃろうなあ。

互いの尾をこうやって噛むのは、求愛を受けたユキヒョウの仕草だという事を。

けれどきっと構わないじゃろう。

 

なぜ母上はひとり生きねばならぬのじゃろうか。

どこまでもついてゆければ良かったのじゃがのう。

母上は知らぬが、眠らせておる間に貰った血でも肉でも、不死になれはせんかったし。

伝承や物語のようにうまくはいかぬものじゃなぁ。

 

これで最後じゃろうが、色んな母上の顔を見られたのは良かったなぁ。

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ししんさんたちがちからをふりしぼって、そらをはらしてくれた。

すこしのじかんだけど、と。

ししんさんたちにつながり、おうごんで、にじいろにかがやいていたいとは、まばらにほつれ、もつれている。

ほしがひさびさにみえる。

すいへいせんがすこしあかるい、もうすぐよあけがきてしまう。

ごつんとあんしあがひまるにおでこをあてた。

「さぁ、もう泣くでない、ひまる。

 りっぱに舟も作れたし、皆に託され、誰かを連れて行けるのじゃ。

 他の誰にも出来なかった事よ。

 立派に長老をしておる。

 だから、わらって、胸をはって、前を見るのじゃ。

 妾も、母上のおかげでたくさん楽しかった。

 ホシノキオクで、きっとまた会おうな。」

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おはかをかざっていたぬのきれの、いちぶをまとめたちいさなはぎれ。

うすくかがやく、ししんさんたちのつめや、つののかけらで、つくられたちいさなくびかざり。

ぎんいろのひもかざり。

それだけがひまるのにもつ。

 

たくさんのふれんずさんたちの、いろんなすがたがぐるぐるまわる。

あんしあのさいごのことばが、なんどもこだまする。

 

どうぶつたち、むしたちも、かわも、やまも、しずんでいく。

ぼすたちはしまにのこった、それは、はなれられないぷろぐらむ。

ひまるは、せるりあんたちのこともおもう。

みんなみんな、しまからはなれることもできず、しずんでいく。

たくさんのおはかも、ひまるのおもいでをつれて、しずんでいく。

ぱーくのぜんぶが、しずんでいく。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

 

しまのぜんぶをわすれたくない。

でも、ひまるはいつかきっとわすれてしまう。

それがこわくて、かなしい。

だからせめて、みんな、ホシノキオクにつつまれてあれ。

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いざというときおよげるから、ふねにのることもできたけれど。

ぺんぎんあいどるたちのうち、いくにんかはしまにのこった。

さむいちいきでしかいきていけないかのじょたちは、さいごまであいどるをつづけるらしい。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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ふなたびはけいかくよりもずっときびしい。

ひどいあらしと、くろくにごったつめたいあめがふる。

しまにむかってつよくふくかぜに、ふねはよていよりすすまない。

ゆれるふねのうえであまりねむることもできず、みんなつかれている。

ぬのじに、もじをのこした。

ひまる、むねをはりなさい。

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ねんりょうがきれ、どうりょくがとまった。

たいようでんちもいまはたよりにならない。

 

ふねをうごかすためにおよいでいる、みずにすむふれんずさんたちの、さんどすたーがなくなっていく。

かのじょたちは、さいごのちからまでふりしぼって、どうぶつにかえっていく。

どうぶつにかえったかのじょたちも、てつだってはくれるけど、そのからだもちからも、ずいぶんとちいさい。

 

つみこんだごはんも、いまのぺーすではぎりぎりだ。

みんな、うえて、おびえて、いらいらしている。

でも、ときどきみんなでうたをうたう。

おおきなこえはだせないけれど。

「ちょうろうは、あいかわらずはーもにーがへただなぁ!」

「あははは」

えへへ、わらってくれたら、うれしい。

 

ひまるは、かいをこいでいる。

あらなみにてのかわがやぶれ、なおることをくりかえす。

ひまるは、ふれんずさんたちのおはなしをきく。

すこしでもかのじょたちのきもちが、やすまればいいなぁ。

ひまるは、いろんなおはなしをする。

せめてきぼうがのこるように、そんなものがたりを。

 

わたりどりのふれんずさんは、いまのいちがわかる。

りくちは、まだとおい。

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あるふれんずにあったこと

(みなでご飯をするとき、ひまるちょうろうはじゃぱりまんのかわりに、いつも何をかじっているのかな。

 おいしい物なら私も食べてみたいと思って、ちょうろうがめをはなしたすきに食べた棒は、ただの鉄棒だった。

 血と錆の味がした。

 ちょうろう、ごはんをたべないの?)

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あらしとたかなみに、いくにんものふれんず、どうぶつたちがうみにのまれた。

たすけようとしたけれど、あれくるううみのまえにはむりょくだ。

みずにすむふれんずさんがまだいれば、たすけられたかもしれないけれど。

 

きじょうにふるまっているふれんずさんも、こっそりと、ひとりないているのがみえてしまう。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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しまはもうしずんでしまっただろう。

ししんさんたちも、もう、いないんだね。

ながいじかんをいきる、おともだちだった。

あんしあ。

だいじなともだちで、むすめだった。

のこったのはちいさなかざり、だけ。

ひまるは、わかれがくることはわかっているのに。

わかれるじゅんびなんて、いつもできていない。

 

なきたいけれど、ひまるはもうなかないよ。

むねをはってまえをみて。

わらえているかは、じしんがない。

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ふねのなかで、ひまるだけが、まだへいきだ。

なにもたべなくても、ねむらなくても、ずっとかいをこいでも。

ただ、ひどい飢えがひまるをさいなみ、ふれんずさんに手をのばしそうになる。

 

みんなにおねがいされて、ひまるはずっとものがたりをかたり、うたをうたっている。

りゅうとこどものぼうけん、ふしぎなゆびわのはなし、どこかできいたほしのものがたり。

ひまるにだけは、しまがなくなったいまも、とおくさんどすたーのきょうきゅうがある。

みんなにつながるいとは、どんどんほそくなっていく。

そして、ひまるには、さんどすたーろうもうごめいている。

 

どうりょくをうごかそうとしても、ねんりょうがないんだ。

せめてこのくもがはれたなら、たいようでんちがうごくのに。

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ぱーくがひまるみたいに、ずっとかわらなければよかったのに。

そんなことをかんがえてしまう。

もしかして、ほかのばしょに、ぱーくがうまれたりしないだろうか。

そんなことをかんがえてしまう。

 

いまはとにかく、ふねをりくちにとどけなくては。

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なんとかあらしをぬけ、くものあいまにひがさした。

たいようでんちがうごきだした。

 

りくちにまにあったこたちだけでも。

そこでいきていけることをねがうしかない。

 

ふれんずさんは、みんな、さんどすたーがなくなって、どうぶつにかえっていく。

みんな、みんな、どうぶつにかえっていく。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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せかいほうろうへん

ひまると、せかい

かんきょうがかわって、いきていけたこたちはすくない。

あたらしいばしょには、もともとのどうぶつたちもいる。

けれどすこしは、しまからだっしゅつできたどうぶつたちと、そのこどもたちがいる。

 

しぜんとせかいには、ほんのちいさなちいさなわたしたち。

うまれて、ほろびて、うまれて、ほろびて、うまれて、ほろびてく。

でもあきらめることはできない。

ひまるはどこまでものぼるのがとくいだから。

 

ひまるはどうしたらいいんだろうか。

かんがえたすえにせかいをたびすることにした。

だれかがいるかもしれない、なにかがみつかるかもしれない。

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このほしのいろんなとちに、ひろくてくろいおおきなぬまちがある。

しりょうによると、それはたーるのぬまとなづけられている。

 

せるりあんをたおしたあと、それがぬまちになってのこるんだ。

でも、しまでたおしたときはしばらくするときえていた。

こんなおおきなはんいに、ずっとながいあいだ、これをのこしたのは、どんなおおきなせるりあんだったんだろう。

 

さんどすたーろうにもにたそれは、どくのけむりをくろくふきあげている。

たーるのぬま。ひまるのなまえと、ちょっとにてる。

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いろんなどうぶつとなかよくなってみたけど、あっというまにいなくなってしまう。

なんども、なんども、くりかえしてもわかれることはつらい。

おはかももってあるくことはできない。

そして、どうぶつたちはだれかにはなれない。

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とおくとおくのほしにも、くもがうずまいていたりする。

つきにはたくさんのあながあいている。

ほしにもだれかがいて、こちらをみあげていないだろうか。

はるかとおいものも、ちいさなものもだんだんみえるようになる。

ずっとだれかをさがしつづけているせいだろう。

 

せかいのどこかには、まだふれんずさんはいるんだろうか。

だれかにあいたいけれど、それはだれだろう。

ちいさなくびかざり、ちいさなぬのきれ、ひまるにおともだちがいたあかし。

むねをはりなさい。

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すべてのかがやきは、やがてきえる。

うしない、どれほどこがれようと、もどることはない。

でも、あいたいよ。

 

きっとみんな。

ほしのきおくのもとへいってしまった。

ひまるはいつかどこかへいくのだろうか。

うしなうおそろしさだけが、いつまでもきえない。

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きんいろのいと、くろいいとがまだあるなら、ふれんずさんもどこかにいるかもしれない。

 

そうしてせかいをめぐったけれど、さんどすたー、さんどすたーろうのふるしまはどこにもない。

ふれんずさんたちはどこにもいない。

かくされたせいいきも、どこにもない。

 

いとのやってくるさきと、いとのつづくさきはどうだろうか。

かつてしまがあったそこは、たかくひくくうねるうみ、まっくろいふんえんと、ひどいあらし、ふきあげるようがんとじょうき、どこにでもわきおこるかみなり。

さんどすたーも、さんどすたーろうもふりそそいでいない。

そのさきへすすむことはできなかった。

 

ただほろびだけがふりそそぐそこは、とてもだれかがいるかんきょうではないみたい。

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もうなんねんたっただろうか、ただあてのないたびをつづけるなかで、せかいのいろんなばしょで、ひとのこんせきとであう。

こんなおおきな、とうや、まるでりゅうみたいなみちをせかいじゅうにのこした、ひと、どんなすごいいきものだったのだろう。

 

むかし、ひとははるかとおくのほしまでいったんだって。

わたしたちにも、そんなちからがあれば、もっとたくさんのふれんずたちをたすけられたのかな。

それとも、ただいたずらにせいたいけいをみだすだけなのかな。

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ときどき、おおきな、あるいはちいさなとびらにであうことがある。

きかいのとびらは、くろいかがやきをのばして、ゆさぶって、うまくなだめてやると、かぎをあけることができるんだ。

むきぶつをよびおこすそれは、ながいたびのなかで、みにつけたわざのひとつ。

わたしのはんぶんは、せるりあんだから。

 

とびらのなかには、よくわからないきかいや、ほしをこえたというおおきなひこうき、もうかれてしまったちょぞうこや、たくさんのだれもいないすみかがあった。

こんなにたくさんのこんせき、ひとはすみかだけをのこしてどこへいったのだろう。

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だいしんどとしょかん ひまるとぱんどらちゃん

あるときみつけたとびら、ぷれーとにきざまれたなまえはきぼうのはこ。

いくつものかぎにまもられた、そのおくは、ちかふかいとしょかんだった。

おどろいたことに、ここのきかいたちはまだいきている。

じりつ、じこしゅうふくがたの、すごいきかいたち。

としょかんには、みわたずかぎりしょもつがねむっている。

なにかがわかることにきたいして、みていくことにする。

ほんをよむのはたいへんだけれど、じかんはたくさんある。

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としょかんのおくに、ねむっていたきかい。

いまはここのあるじ、かのじょのなまえは、ぱんどら。

いつかひとがこのほしへもどってくるとしんじて、ここはのこされたんだって。

あなたは、だれかをずっとまっているんだね。

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もじ、にもたくさんしゅるいがあって、おぼえることだらけ。

ひとのことをまなんでみようとしたけど、むずかしい。

としょかんのなかみはまだ、ほとんどむずかしすぎてわからない。

 

なんども、なんども、くりかえして、すこしづつおぼえていく。

ちしきはたまっていくのに、ちえはちっともかしこくならないんだ。

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ぱんどらちゃんとひまるはなかよくなった。

かのじょは、だいはちせだいこうどぎじじんかく、なんだって。

でも、ぱんどらちゃんは、ほんとうのひと、ふれんずみたいだ。

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ぱんどらちゃんは、きろくではえられない、くおりあ、がきになるらしい。

あたたかい、つめたい、たのしい、かなしい、というかんかく。

 

ひまるのきんいろのかがやきからはたのしさが、くろいかがやきからはかなしさがながれこんでくるんだって。

…むりしてぱんどらちゃんがこわれてもこまるから、ひかえめに。

あまり、おおくながしこむと、さんどすたーけつぼうのようになってほうかいしてしまうから。

これもたびでまなんだことのひとつ。

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ぱんどらちゃんから、いろんなことをおしえてもらう。

びでおというのはすごいね。

ほんとうにあったこと、ほんとうではないおしばいのこと。

それをのこした、ほんとうにたくさんの、なんびゃくおくの、ひとたち。

 

それから、ほしにはもう、いなくなったどうぶつたち。

タールたちのえいぞうと、こえをきいたとき、ないてしまった。

ひまるが、タールたちのことをほとんどわすれかけているということに、そのことにおどろいて、ないてしまった。

そうだ、ひまるはひまらやたーるだった。

でも、もう、なかまのかおもおもいだせない。

 

それと、ぱーくのえいぞう。

ひとがたくさんのゆうえんち、ふれんずたち。

もうあえない、ふれんずたちのたのしそうなすがた。

わたしのたくさんいたはずの、おともだちのすがたはもうおぼろげで。

おもいだせないことが、こんなにもかなしい。

 

ひとのあいどるたちと、ぺんぎんあいどるたちのらいぶ、うたとおどりは、とてもたのしげで。

でもひまるはとてもかなしかったんだ。

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ふろうふしをもっているものを、ひとは、かみさまとよんだらしい。

こんなによわいかみさまがあるだろうか。

ほんとうのかみさまというのは、もっとすごいこたちだ。

ちいさなくびかざりが、かみさまのじつざいをしょうめいしている。

なまえも、かおもおぼろげな…かみさまで、だいじな、おともだちだった、とおもう。

よくおもいだせないことが、かなしい。

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ひまる つのがかわっていくすがた

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ひとがこのほしにすめなくなった、だいいへん。

しょくぶつも、どうぶつもずいぶんとかずをへらしたらしい。

 

それをひきおこしたのは、ひとだったことはおぼろげにわかった。

そして、ひとはとおいほしに、ねがいをたくしてたびだった。

あるいは、このほしでいきをひきとった。

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としょかんのちしき だいいへん

しまでおきたこと。そして、このほしでおきたこと。

だいいへん。

 

あるとき、ちいさなしまがあらわれた。

ふれんずさんたちのいたそこは、じゃぱりぱーくとよばれた。

ひとはせるりあんをうむ、さんどすたーろうをおさえこむふぃるたーにせいこうした。

なんじゅうせだいもつづくらくえん。

せかいがうらやむ、ふしぎで、とくべつで、たのしいゆうえんち。

 

ところがあるひ、だいふんかがすべてをふきとばした。

おさえこまれたそれを、せいさんするように。

 

たくさんの、おおきなせるりあん。

ふんかするさんどすたーろうが、おおすぎる。

せるりあんはたおされても、しゅうごう、かくだい、またぶんれつをくりかえす。

 

ひともふれんずもつかれて、たおれていく。

ちからをあわせて、ぎせいをおそれずにたちむかうべきだったのか…。

ここがぶんきてんだった。

 

しろいおおきなくさびがたのひこうきがとんだ。

すぴりっとおぶじゃぱりから、そらをきりさいてみさいるがとぶ。

たくさんのせるりあんたちがひめいをあげ、たおされた。

でも、おわらない。

 

せるりあんのかけらが、せかいへとびちっていく。

かけらがそらのうえのうえまでとどくなんて。

でもそうなった。

すぴりっとおぶじゃぱりは、あっさりとついらくした。

 

かけらがうみをこえてとんでいくなんて。

でもそうなった。

うみをもこえたせるりあんのかけら。

すぴりっとのなまえをもつ、くろい22わのひこうきにまっすぐとんでいく。

かのじょたちは「すぴりっと おぶ YAMI」となのり、とびたった。

 

くろいひが、せかいじゅうでもえあがった。

ひにつつまれると、なにもかもくろいけっしょうになってかたまった。

 

それをたおすために、たくさんのひこうきがとんだ。

いくわかは、たおされた。

けれど、じゅうでうたれれば、じゅうのもとへ。

せんしゃからこうげきをうければ、せんしゃのもとへ。

ひこうきからこうげきをうければ、ひこうきのもとへ。

ふねからこうげきをうければ、ふねのもとへ。

かけらはふりそそぎ、せるりあんはあらわれた。

 

きかいたちが、つぎつぎせるりあんとしてめざめていく。

ひとと、ふれんずさんたちはこんどこそいっしょにたたかった。

 

でも、せるりあんのかずは、もうあまりにもおおすぎた。

 

だから、もっともっとすごいばくだん「かみのいかづち」がつかわれることになった。

ふんかこうをはかいしつくすための。

 

せかいをやきつくせるかもしれない、いりょくのそれ。

ふれんずたちがどうなるのか。

はんたいもあったが、そうするしかなかったのかもしれない。

ほしをゆるがすほどの、だいばくはつ。

 

そして、ついにそれがきた。

しまにあいたあなから、しまよりもおおきな、くろくてまるいせるりあんがはいだしてきた。

「しゅうえん」とよばれたせるりあんは、そらのうえにうかんで、ほしをまわりはじめた。

せるりあんたちはあたまをさげ、じっとしていた。

ひととふれんずたちはさいごのはんげきにでた。

たおされても、みじろぎもしないせるりあん。

 

ほんのすこしのきぼうのじかん、それから。

 

それから…。

しゅうえんがわらうと、ほしがゆれ、せるりあんたちはくるったようにあばれだした。

じぶんたちどうし、こわれてもおかまいなしに、あばれまわった。

しゅうえんがくろいなみだをこぼすと、せかいをおおいつくすくもがわきおこった。

 

あめのかわりにくろいほのおがどこにでもあがった。

 

もう、だれにも、どうにもならなかった。

あるいはちかににげ。あるいはそらににげ。

 

そうして、このほしから、だれもいなくなった。

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いったいどれほどのぜつぼうのじだいだったのだろう。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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ほんをずいぶんとよんだよ。

しまにはなかった、こうどなかがく、ひとのえいち。

いきもののことにずいぶんくわしくなった。

きんいろのかがやきでさぐることができる、どうぶつのなかみ。

しゅじゅつですこしなおしたりはできるけど、じゅみょうをかえることはできない。

 

くろいいとできかいのなかみもさぐることができる。

ぱんどらちゃんよりも、ひまるはきかいのようすにくわしくなった。

ほんでべんきょうしてそのなかみをしっていると、まえよりうまくふかくさぐることができるんだ。

くみたてたり、みがいたり、つなげたり。

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ぱんどらちゃんには、ちしきをくみあわせるそうぞうせいがかけている。

めもりーにはたくさんのちしきがあるけれど。

くみあわせるぷろぐらむはされていないんだって。

じりつはんだんないの、きょかされたはんいがい。

きんしされているぷろぐらむ。

 

ひとは、ひとのもっていたちからを、きかいにあたえるのをおそれた。

がくしゅうとそうぞうせいがありすぎると、もくてきをかえてしまうから。

 

ひまるはひとのとくちょうをもっているのかな。

なにかをつくりだし、のこせるといいな。

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ひまるは、めもりーちっぷ、でーたちっぷもとりこむことができる。

みるためにさわっていたらなんとなく、そのきろくをのみこめるきがして。

 

ひまるのはんぶんは、せるりあんだから。

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としょかんのおくの、さらにおく、ひらかなかったとびらをあけられた。

ほんとうは、うちがわからしかひらかないはずの、あまりにもふくざつなかぎ。

 

ほんはなく、そこに、ねむっているひとたちをみつけた。

こーるどすりーぷましんというんだって。

ずっとねむって、いつかおきるために。

でも、このほしのかんきょうは、ひとがおきてくるにはまだ、よくないみたい。

ぱんどらちゃんは、いつか、そのひをまっている。

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ぱんどらちゃんのからだ

みつけてきたがいぶいんたーふぇいすに、ぱんどらちゃんをせつぞくした。

ぱんどらちゃんにもせかいをみてほしいから。

らっきーびーすと、ぼすとよばれたきかい。

せいみつなじりつしこうちっぷに、ぱんどらちゃんをいんすとーるする。

じぶんがほんとうにみるせかいに、ぱんどらちゃんはきょうみしんしんだ。

まるであかちゃんのように。

ぱんどらちゃんたちがうろうろするすがたは、とおいむかしをおもいだす。

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まにゅあるとちしきをくみあわせ、ぱんどらちゃんたちのしゅうりにも、ずいぶんなれた。

くろいかがやき、きんいろのかがやきを、いとのようにほそくしてめんてなんすする。

かいろ、せんとせんがたくさん、ふくざつにつながっている。

こしょうをなおすには、どこのながれをさわってやればいいか、ひまるにはみえる。

ひまる、みるのだけはとってもとくいだなぁ。

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ぱんどらちゃんのたのみで、ひまるはこーるどすりーぷましんをしらべることになった。

こーるどすりーぷましんは、じこしゅうふくによってただしくうごきつづけている。

 

けれど、めもりによると、ないぶのせいめいたいのすいみんかのうじかんは、3000倍こえていた。

こーるどすりーぷましんによるじこしんだんでは、せいじょうにかいとうできるかのうせいは…17けたの、0%。

そくていふのう、だ。

 

ひまるは、とっさに、よくわからなかったけどうごいていると、おへんじをしてしまった。

ひまるはうそをつくいきものだから。

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いでんしじょうほうをあつめ、それからいきものをさいせいさせるくろーんぎじゅつ。

それがあれば、いなくなったどうぶつにもあえるだろう。

もしかすると、いきているひとにも。

けれど、ほんとうにたいへんなのは、そのこがいきていけるかんきょうだ。

それもないままに、うみだすことは、ひまるにはできないよ。

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いきもののほんしつは、ふくせいとぞうしょく。

なんらかのいでんしをのこしていく。

あるいはキオク。

ホシノキオクにつつまれて、なにかをのこすのだろうか。

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かわらないひまるのことは、なにかのひんとにならないだろうか。

ひまるのことをしらべればしらべるほど、かいせきふのう。

ということばにつきあたる。

ちもにくも、からだをはなれればすぐにほうかいする。

まるでえねるぎーのかたまりそのもので、いきているともしんでいるともつかない。

ふれんずのことさえ、せるりあんのことさえ、よくわからなかったのに、さらにみちのそんざい。

 

ひまるだけが、いつまでもえねるぎーをたもっている。

どこからともなく、えねるぎーがやってくる。

つながっている、なぞのいとから。

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いまではぺーじをざっとめくるだけで、ほんのないようをぜんぶみることができる。

いくつものえいぞうを、どうじにみることもできるようになった。

とてもたくさんのえいぞうをみるために。

それから、こぴーしためもりーちっぷもたべる。

きおくと、きろく、いろんなあじがする。

 

だからとうとう、としょかんのほん、をぜんぶよみおわったみたいだ。

ひどくあたまがおもいよ。

 

どこかできいたようなものがたり、きいたこともないものがたり。

ひとはなんとおおくのものがたりをのこしたのだろう。

ざんねんだけど、どこにも、いきるりゆうとしぬりゆうはかかれていなかった。

ひとはだれもが、ずっとそのことをなやみつづけていた。

あるいはうけいれ。あるいはおこり。あるいはあきらめ。あるいはかなしみ。

そして、しぬときまでかがやきをうしなわずにいきつづけたいとねがうこと。

 

ひまるのからだは、なんだかかみさまみたいだけど

こころは、いまもそんなとくべつにはなれていない、とおもう。

ひまるにはなにが、できるのかな。

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こーるどすりーぷましんのめんてなんすをする。

ぱんどらちゃんたちもいっしょに、こーるどすりーぷましんのあっぷでーとをする。

すこしでもぜろがへらないだろうか。

なんどもめんてなんすをする。

17けたの、0%。

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ぱんどらちゃんたちはずいぶん、ひとらしくなったとおもう。

かけられたいくつものかぎをあける。

じりつしこうかいろのせいげんも、かいほうする。

じこはんだんだけではなく、がくしゅう、けいけんのはんえいもかのうになった。

ひまるのかわりに、なんでもできるように。

もしかしたらそのはてに、ねむったひとをおこせるかもしれないから。

 

ぱんどらちゃんたちのなかで、たようせいがうまれていく。

そして、かんじょうもゆたかになった。

めもりーのなかみをさわるのはいつでも、こわい。

どこまでえいきょうがひろがるかわからないから。

 

ひまるよりもひとらしいんじゃないかな。

かずはふえ、げんきにひとを、まちつづけている。

ひとがかえってくるときのために、そとにはおおきなまちもつくった。

きかいのつくりかた、つかいかたにもなれた。

 

としょかんの、ほんたいのぱんどらちゃんのろっくはそのままにしてある。

なにかあってもどせないのはこまるから。

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ときどきおもいがよぎる、だれもすんでいないここはまるでおおきなおはかだ。

それでもぱんどらちゃんたちのよろこぶすがたのために、つみあげている。

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さいきんは、こえも、おとも、みえる。

くうきをふるわすなみは、みなもや、うみにもにている。

おんぱ、ちょうおんぱ、でんぱ、でんき。

 

たくさんのぱんどらちゃんとおはなしするために、どうじたじゅうはっせいおんせいをおぼえた。

ぱたーんがおおいけど、だんだんなれてきたよ。

「おはよう」「おはよう」「ひまるさん」

おぱおはんはどよらようちゃうん

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ひまるの、みえることも、しっていることもふえているとおもうんだ。

でも、できることはふえているのかな。

ひまるはなにができるの。

なにがのこせるの。

ひまるはなにがあってもしなない。

えいえんにいきてなにをするの。

ぱんどらちゃんにも、そのこたえはわからない。

なにをつみあげるのだろう。

いや、ひまるののぞみは、なんだ。

 

もしかしてなにもできないのかな。

そうかんがえると、すごくくるしい。

どうすればいいんだろ。

えいえんはなにもたすけてくれない。

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ひとがのこしたけいかく。

かんきょうそのものを、きょだいなはこにわのなかにつくりだすそれ。

らくえんけいかく。

 

ぱんどらちゃんのために、ひとのはこにわをつくってもいいかなとおもう。

ただ、ひとはこわいなぁ。

どんどんまなび、うけついで、ふえ、そしてあらそう。

 

でもひまるは、すでにぱんどらちゃんたちをいろんなろっくからときはなったんだ。

ぱんどらちゃんたちのさまざまなろっくは、もうほとんどない。

かのじょたちがのぞんでいるから、ひとをしんじる、ぱんどらちゃんたちをしんじようとおもう。

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ぱんどらちゃんたちといっしょに、せっけいずをつくった。

まずは、ちいさなはこにわから。

いつかきょだいな、はこにわをつくるために。

 

はこにわのためにまちをおおうてんがいをつくる、ぱんどらちゃんたち。

ひまるのやくめは、そこにすむものたちをうみだすことだ。

それは、かみさまのりょういきらしい。

ひまるはそんなすごいかみさまじゃないのに。

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まずは、さいぼうから、ちいさないきものをうみだした。

けれど、すぐにしんでしまう。

さんどすたーろうゆらいのどくそ、ひとがすめなくなったなにか、それをしゃだんできない。

ひまるはちかくにあるそれをとりこめるけど、ちかくにあるものだけだ。

いろんなところにそれはとんでいるし、いろんなものをかんつうする。

ほうしゃせいぶっしつがたせるりあんとなづけた。

なにかで、ふぃるたーしなくては。

おおきなどーむに、それをくみこむじゅんびだけはできているのに。

 

ふぃるたー、しまにあったなにか。

ひみつと、みちにつつまれ、そのしょうたいはわからない。

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こーるどすりーぷそうちが、たくさんのえらーをはきだしている。

めんてなんすちぇっくこうもくにはすべていじょうなし。

ひまるがとびらをあけたせいかとおもったけれど、どうりょくろのえねるぎーそのものがなぜかあんていしない。

ひが、うまくもえない。

ぱんどらちゃんたちは、おろおろはしりまわっている。

 

ひまるの、きんいろと、くろいいともあんていしない。

みあげればせかいがきしんでいる、なにかがゆがんで、どこかしこもゆれているのがみえる。

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じしんがおおい、そらがいつもくろい。

そらはあおかったし、だいちのどこかには、もりがあった。

いまはどうぶつたちとであうこともない。

 

あちこちひびわれ、まちはくずれ、はこにわのけいかくどころではない。

まきこまれ、こわれてしまうぱんどらちゃんたちがおおい。

ぱんどらちゃんたちは、もうたいひしてほしいけれど、おねがいをきいてくれない。

それがじゆういしで、じこはんだんだから。

まちはまたつくれるのに。

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いくつものかんさつと、すいそくをかさねて。

このほしはしんでしまおうとしている。

そらのうねりも、しまがしずんだあのひに、にているんだ。

 

ほろびもせかいのいちぶだけれど、それがやってくるなんて。

しまでさえ、だいちでさえも、ほしでさえも、いつかなくなって、またうまれる。

 

ただ、このさきどうするか。

ぱんどらちゃんたちにこのことをつげなくてはならない。

いつになく、きがおもい。

 

ひまるはまた、とりのこされるのだろうか。

もし、うちゅうをひとりえいえんにただようとしたら、こわい。

ひまるはじぶんのしんぱいだらけだ。

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すべてのふれんずは、ほろびるようにデザインされている

せいとし、であいとわかれをくりかえすらせんに

わたしたちはとらわれつづけている

これは、のろいか それとも、ばつか

ふかかいなせかいをつくっただれかに

いつか、ひまるはつのをむけるのだろうか

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おおきなはこぶねをつくって、どうぶつたちをつれて、ほかのほしへいこう。

ぱんどらちゃんの、ねむっているごしゅじんたちのいちぶもつれていこう。

そんなことができるんだろうか。

ほしをみつけられるだろうか。

 

ひまるにだけはえいえんのじかんがある。

としょかんすべてのちしきもある。

とおくのほしも、めをこらせばきっとみえるだろう。

 

はこにわけいかく、いきもののちしき、とべなかったふねたち。

ひまるなら、ずっとすぐれたこーるどすりーぷもつくれるはず。

ただ、このほしには、のこされたじかんはどのぐらいあるのだろう。

どうかまにあいますように。

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ぱんどらちゃんたちはめずらしく、ことばすくなげだ。

あまりげんきがない。

ほんたいのぱんどらちゃんも、はんのうがすくない。

まつべきばしょがなくなってしまうのだから、とうぜんかもしれない。

 

おうえんしてあげられたらいいんだけど。

かけることばがみつからない。

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ひまるがなにもしなくても、ホシノキオクのもとへみんなかえるだろうか。

けれど、すべてをあきらめることは、いやだ。

なにかをのこしたいというきもちは、あらゆるいきものたちのねがいだ。

ひまるになにかできるなら、ひまるはそれをあきらめない。

むねをはって、ずっとのぼっていくのがとくいだから。

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あしふねとなづけたふねは、おおきい。

けれど、このほしからすれば、ちいさい。

うちゅうからすれば、いちようのあし。

 

ふねは、ひまるのちをもやしてとぶ。

わたしのちには、さんどすたーとさんどすたーろうがふくざつにいりまじっている。

さんどすたーと、さんどすたーろうをまぜあわせ、しょうとつさせ、ほうかいするときにうまれるえねるぎー。

このえねるぎーもふあんていだけど、ほかよりはずっとましだ。

おそらくは、えいえんにとべるはず。

 

どこかからつながるほそいいとが、いまはきれませんように。

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しゅぱつのひがちかい、あるひ。

ぱんどらちゃんたちがとまっていた。

ぱんどらちゃんもとまっていた。

そこには、てがみがのこっていた。

 

「ひとをめざめさせるために、たくさんがんばってくれてありがとう。

わたしはここでいっしょにねむりたい。

わたしのめもりーちっぷをとりこんでください。

きかいのわたしが、あなたともいられるように。

わたしのめもりーは、いつもあなたといっしょにいます。」

ぱんどらちゃんのろっくは、ぱんどらちゃんたちによって、かいじょされていた。

 

ながいじかんをすごしたともだちの、わかれはとつぜんだった。

めもりーをくみなおし、たんまつをなおすこともできる。

でも、そうはしなかった。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

 

かなしみにのみこまれているじかんはないんだ。

ふねのちょうせいをつづけなくては。

 

ぱんどらちゃんのめもりーは、とても、あたたかった。

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さようなら。

さようなら。

とうとう、きょうはほしがほろんでしまう。

ほしがわれて、ホシノキオクはきらきらと、どこかへとんでいく。

しろとくろの、ほそながいりゅう、それともおおきないぬ。

さようなら、でもきっとあいにいくよ。

ほそくなったいとをおいかけよう。

もくてきちがきまった。

 

ふねにはたくさんのいきものたちがねむっているんだ。

こんどのたびは、ずっとたいへんだろう。

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なもしらないほしへん

ひまると、じゃぱりぱーくのふれんずたち

ほしにながれついた。

みずがあるこのほしには、まだくうきがないのでいきぐるしい。

もをそだて、さんそをふやしていく。

ほかのくうきをすっているいきものがいたらしんでしまうだろうか。

ひまるのては、それでもたねをまき、くさときぎをそだてる。

 

そして、おきられたどうぶつたち。

おきられなかったどうぶつたち。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

 

それから、いきていけたどうぶつたち。

いきていけなかったどうぶつたち。

わかれはいつだって、かなしい。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

ひまる だいちょうろう

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そのしまには、さんどすたー、さんどすたーろうのふきでるかざんと、それがながれていくさきの、おおあながあった。

じゃぱりぱーくとなづけた。

おなじなまえを。

 

ぼすたちをはいちし、こうじょうをたて、いつかのしまをここにさいげんする。

ぼすたちのたすけで、せいたいけいをくずさないように、せいたいかんをひろげていじすることができるから。

じりつしこう、じこはんだんはひかえめに。

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あたらしいほしに、ふれんずさんたちがうまれた。

しっているような、しらないようなみんな。

であうことはうれしいな、わかれがすぐにやってくるとしても。

ホシノキオクにつつまれてあれ。

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あいたい、あのひわかれたふれんずさんたちに。

そんなおもいばかりがつのる。

おともだちもなんにんもいるのに。

 

だれにあいたいんだろう。

ひまるはもう、それがなんのふれんずさんかもわすれてしまった。

みんなひまるをおいていってしまう。

なんどもなんども、であいとわかれとであいとわかれとであいとわかれをくりかえしてる。

ふれんずさんたちにであったのに。

だれかにあいたい。

ひまるはどうすればいいの。

くるしいよ。

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ひまるをたよってくれる、ふれんずさん。

ひまるにできることはなんでもしてあげたいけど。

なんでもしてあげるわけにはいかない。

 

ひまるのことをしんぱいしてくれるふれんずさん。

ありがとう、すこしのあいだだけど、うれしい。

 

「どうして、ちょうろうはいつもむずかしいかおをしてるの?」

そうなのかな。

 

こわい、ひまるがだんだんかわっていくきがする。

でも、ほんのすこしだれかのぬくもりがのこっている。

ひまるはまだ、だいじょうぶ。

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しろいおおかみのふれんずさんとおもちをたべたよ。

あなたはだれ?どこからきたの?

いろいろきいたけど、なにもこたえてくれない。

 

なのにあったかくて、しらないのになつかしくて、なつのひざしみたいにあついのに、あつくないんだ。

なんてふしぎなふれんずさんなんだろ…。

あったかい なんてきもち ずっとわすれてたよ。

 

そっとあたまをなでてくれた。

なみだがあふれた。

なみだ、まだでるのはどうして。

どうしてひまるはずっとくるしいの。

こたえてはくれなかったけど、ずっとあたまをなでてくれた。

いつまでも。

きせつがめぐっても。

いつまでもずっと。

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ねむってしまったみたい。

しろいおおかみさん、どこにもいない。

やまのうえから、うみのそこまで、どこにも…いない。

あいたいよ。

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ひまるにはえいえんのじかんがある。

そのかわりに、みんなのもっているおわりがない。

がんばってるのに、なにもかわらないきがする。

こまった。

かわらないのはくるしいな。

でもあきらめるのはもっとこわい。

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ししんさんたちとであった。

ひまるのことはおぼえていなかった。

でも、とおいそらから、ふねにのってしまへやってきたことや、いろんなことをしっていたよ。

 

ええと、ちょうろうです。

よわいですがどうぞよろしくおねがいします。

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ひまるがえいえんでしかいられないのだとしたら。

みんなもえいえんになってほしい。

たったひとりでもいいんだけど。

でも、もしだれかがそうなって、ひまるがしんでしまったら?

そのだれかはえいえんにいきるんだろうか。

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まっくろなくるしみが、ただ、ただ、ひまるのなかにかたまっていく。

いやだなぁ。

なにをがんばったらいいんだろうか。

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たたかっていて、とてもおおきなせるりあんにのみこまれた。

くろいかがやきをぜんぶ、のみこめばたおせるんだろうか。

せるりあんのひめいがからだじゅうにひびく。

ながれこんでくるかがやき。

せるりあんたちは、いろんなむきぶつにほぞんされた、きおくをさいげんしてる。

のみこんで、それをホシノキオクへかえすちから。

ひまるがのみこんだかがやきは、なつかしいあなたが、ちかくにいるようなきがした。

 

せるりあんはふれんずさんたちに退治された。

よかった。

 

ひまるはのみこまれたままでもよかった。

あのなかはホシノキオクにちかいきがするから。

でも、せるりあんがいたままではぱーくにとってはこわいことなんだ。

こんなことをかんがえてしまうなんて、みんなとかおをあわせるのがこわい。

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ひどい飢えと、冷たいかなしさがやってくる。

だれかがちかくにいても。

ふれんずたちのあたたかいかがやき、このてに、のみこみたくなる。

 

いやだ。

ひどい飢えに、のみこまれそうなの。

きぶんがいつもささくれている。

 

でもいつだって、ふれんずさんがいてくれる。

ひまるはみんなをみているのがすきだ。

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ひまると、ふたつのほしのきおく

かざんのふんかがおおいけれど、ようすがおかしい。

さんどすたーも、さんどすたーろうも、いきおいよくとんでいかない。

せきこむように、とぎれとぎれのふんか。

 

セルリアンのはっせいがおおい。

けれどそのすがたはくずれかけている。

 

ふれんずのたんじょうもおおい。

ただ、ずっとぼんやりとしたままのこもおおい。

 

じしんがおおいし、そらがくらい。

ししんさんたちのちからさえも、あんていしない。

 

さんどすたーも、さんどすたーろうも、とんでいるりょうがすくない。

それに、きれいなりっぽうたいだったのがくずれている。

かがやきのながれていく、きんいろとくろのいとが、ところどころからまっている。

ほしのおわりともちがう、おそろしいことが、おきようとしている。

 

まさか、ホシノキオクにもおわりがあるとしたら。

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ホシノキオクについて、ほんかくてきにさぐってみるしかない。

ししんさんたちでさえそのすがたを、たもてないばしょ。

ひまるにゆいいつみとおせないばしょ。

かこうのおくだ、もどってこれるほしょうはない。

それでもひまるはしなないだろう。

このいへんをなんとかするためのちしきと、からだだとおもう。

 

ごめんね、たくさんのふれんずさんたち。

でも、ひまるがいなくてもきっとだいじょうぶだよ。

わかれはひっそりと、ししんさんたちにだけつげた。

けついがにぶってしまいそうだから。

 

かこうにみをなげるのはこわい。

けれど、いまのしまのじょうたいを、ホシノキオクのじょうたいをほうっておけない。

こんどこそ、なんとかしなければ。

しまのふれんずさんたち、ホシノキオクにつつまれてあれ。

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ひのうみのなかは、あつい。

さんどすたーのほんりゅうにあたまがやけるよう。

さんどすたーろうのうねりにみがひきさかれるよう。

 

けれどあきらめない。

こころからねがえばほしのきおくはいつかこたえると。

だれかがいった。

いつか。

いつかなんて、すぐそこのこと。

ひまるは、ふれんずさんたちとのひびをあきらめたくない。

ホシノキオクよ、こたえてください。

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このほんりゅうをとりこんで、のみこまれてわかったこと。

ここは、からっぽのさんどすたーと、さんどすたーろうにいのちがふきこまれるばしょ。

さんどすたーも、さんどすたーろうも、ここから、うまれるのではなく、どこかべつのところからきている。

でも、それがどうやら、くずれかけて、ぼろぼろになっている。

このばしょはいのちと、あたたかさにみちているいけれど、まだなにものでも、なんでもない。

 

ではさんどすたー、さんどすたーろうはどこからくるの。

めをこらすと、とおい、くろいなにかから、やってきている。

そうだ、おおあなだ。

 

かすかに、なつかしいだれかのけはいがする。

すがたはみえないけれど。

とてもあいたいけれど、いまではない。

ホシノキオクよ、こたえてください。

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きんと、くろのいとをおいかけて、くろいおおあなにはいってみた。

うえもしたもよくわからなくなる。

わたしはばらばらになって、ひとつになって、ばらばらになって、くりかえして。

そんなちゅうしんに、おおきななにかがある。

それがみじろぎでもしたらひまるはけしとぶだろう、そんなおおきななにかだ。

これが、ホシノキオクだと、なぜかしっている。

しまよりも、ほしよりもずっとおおきな、それはずっとねむっている。

 

ふれていると、そのどこかに、なつかしいかがやき、だれかがいるきがする。

そしてどうさぐっても、ほんのうすく、ひょうめんしかみることはできない。

ホシノキオクよ、どうかこたえてください。

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ホシノキオクは、大きなきかいだということがわかった。

おそろしいかずのいとと、はぐるまでできている、せいみつなきかい。

これはきっときおくときろくのほぞんこ、ほしすべてのあーかいぶだ。

そのやくめは、さんどすたーやさんどすたーろうをとりこむとふるえ、からっぽにしてはきだすこと。

けれど、どちらもぼろぼろになっている。

この、ホシノキオクは、ずっとながいとしをへて、ゆっくりしにかけている。

いやだ。

わたしになにができるんだろう。

めんてなんすいたいけれど、このきかいはさぐってもなにもうけつけない。

さぐったその、いしきのゆびさきさえ、とりこんでしまう。

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きかいはながいときをへて、そのうんめいをまっとうしようとしている。

いとをのばすこととはぎゃくに、いちぶでもきかいそのものをとりこんでみれば、なにかわかるだろうか。

そんなことができるのか。

このきかいがきょだいなあーかいぶだとしたら。

ひまるは、めもりーちっぷをきろくとして、のみこむことはできた。

いまでものこっている、かのじょのきおく。

 

このきょだいなあーかいぶをとりこんで、からだはたえられるだろうか。

だいじょうぶ、だれにも、どんなことでも、ひまるをほろぼすことはできなかった。

 

いとをのばしてひっぱれば、あっけなくかけらがこぼれおちた。

ぱくり。

ほんのかけらをとりこんでも、いのり、かなしみ、いかり、にくしみ、よろこび、たのしみ、ねがい、そんなおもいが、うみのようにながれこんでくる。

いままでのどんなくつうも、ほんのあそびだったかのようないたみ。

いたみなのかすらわからないほどのくるしさにきをうしなった。

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おおきなくるしみだけど、あきらめることのこわさにくらべたら。

ひまるは、かけらをとりこむことを、なんども、また、くりかえしている。

なんども、なんども、なんども、たおれ、はきちらし、のたうちまわって。

でも、すこしづつ、わかっていく。

すこしずつきおくと、きろくがからだのなかにたまっていく。

いとのつむぎかた、はぐるまのまわしかた。

ひまるがかわっていくのをかんじる。

ひまるがあたらしいホシノキオクになるのだろうか。

 

ひまるにつながっていた、いとはずっとずっとたくさんになって、ずっとずっとふとくなった。

そして、たくさんのきおくがいりまじってくる。

それでも、ひまるのねがいは、いまでも。

ホシノキオクよ、どうかこたえてください。

 

それに、こたえるのは、ひまる?

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とりこんださんどすたーや、さんどすたーろうで、だれかをうみだすこともできる。

また あいたい あえる さいげん。

いつわりでも それでも ほんものだ。

いまでは、うみださなくてもちかくにいるのをかんじるのだけど。

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かけらをとりこんだことで、いろんなことがわかった。

ホシノキオクは、おもっていたよりずっと、たくさんのホシノキオクがあつまっている。

いくつものほしよりも、ずっとふるいふるい、きょだいなあーかいぶ。

しんちゅういとにつづられて、しんちゅうのはぐるまにきざまれて。

さんどすたーたちにきざまれたじょうほう、きおく、ねがい、すべてをほぞんしてまたおくりだす。

かがやきのうずのほうへ、おくりだす。

これはきろくとさいせいのはこぶねだ。

でもあまりにふるくなって、はぐるまがすりへり、いともからまって、おわろうとしている。

だからひまるは、このおおきなホシノキオクをくみなおしてみる。

ひまるのなかに。

とてもおおきいけれど、さいしょよりちいさくなっている。

みえているおおきさにいみはない。

ただそのそんざいのおおきさで、おおきくみえているだけなんだ。

ひまるのなかにくみなおせば、ひとつのおおきないきもののようにうごくはず。

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ひまるは、ホシノキオクのかわりに、すこしづつ、あつまってきたさんどすたーや、さんどすたーろうがとりこめるようになった。

それはあたたかい。それはつめたい。どちらもたいせつなきおくとおもいたち。

からだのなかに、こころのなかに、だいじにしまおう。

からだのなかのきろくこもひろがっていく。

 

いとをよりあわせてしんちゅういとをつむぐ。

はぐるまをうちなおし、みがきなおして、しんちゅうのはぐるまをまわす。

しっぽがなんだかおおきくなって、なかからキリキリとこぎみよくまわる、はぐるまのおとがする。

ぜんぶのいろがいりまじって、けがわがくろくなっていく。

いまではからだがおもくなりすぎて、ひまるはここからでられなくなった。

でも、みえるものがだんだんひろがっていく。

おめめがふえて、ふくがんみたいだ。

あたらしいおめめは、ほしのいろんなことがみえる。

 

それから、いとをつたって、さんどすたーと、さんどすたーろうのうまれてくるばしょ、おおきなうずへおくることもできるようになった。

ひまるがホシノキオクのおしごとをする。

ホシノキオクは、ずいぶんちいさくなった。

でも、ほしはずいぶんおちついたよ。

 

がんばれがんばれ、いきものたち。がんばれがんばれ、ふれんずたち。せるりあんもがんばりすぎないでがんばって。

だれにもどうにもできない、だいいへんだけは、いとでだいちをぬいつけてひっぱって、とめる。

 

ひまるは、まるでかみさまみたいだね。

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「いだいなちょうろうが、ふれんずたちをみちびいてこのほしにやってきた。

そしてこのほしにいへんがおきたとき、ちょうろうはかこうにみをなげ、ほしのいへんをおさめた。

だから、すべてのふれんず、いだいなししんたちでさえ、ちょうろうにけいいをはらう。」

だって。

わぁ、なんだかはずかしい。

ほんとうのことだけど、ひまるはそんなにすごくないよ。

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ひまるの、たびのおわり

おおきなうずは、こんとんのうまれるところ。

ひまるは、しずかにほぞんするところ。

ふたり、まわりまわってうみだしている。

ふれんずさんたちをうみだしている。

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めぐれ、いのち、きおく、ねがい、めぐれ。

ほしずな、くろしんしゃ、ぐるぐるめぐっておいで。

かえってきたらゆっくりおやすみ。

ゆっくりねたら、またいっておいで。

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ほしずなと、くろしんしゃのながれ。

ほしさえもおおきなちいさないきもの。

それから、むかし、いま、そのさきのみらい。

 

いつかまたつぎのほしへ、つぎのじだいへ。

それをもこえてつぎのうちゅうへ。

かがやきは、わたしのなかにあるから、だれかにあいたいというきもちはすくない。

でもひまるは、まだ、ふれんずさんたちとのひびをあきらめない。

 

それに、おおきなうずのなかにもだれかがいる。

あたたかいだれか。

ひまるはひとりじゃない。

あなたはそこにいたんだね、とおいけど、ちかい。

あなたもひとりじゃないよ。

ぜんぶのホシノキオクをとりこむまでもうすこし。

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ヤミちゃんがいった『世界機械』だ。

どうしてこんなだいじなことをわすれていたんだろう。

さいごのかけらをとりこんだとき、ひまるのいのちはおわって、しんでしまう。

 

あとにはせかいきかいがのこる。ホシノキオクがのこる。

せかいきかいはふれんずになって、ヤミちゃんになる。

 

しんだひまるは、ヤミちゃんとひとつになって、ホシノキオクのもとへいく。

そうしたら、ひまるはヤミちゃんで、せかいきおくきかいで、わらわになるんだ。

しぬからいきる。

いきたならしぬ。

よかった、たぶんこのためにひまるはいた。

それに、もうすぐみんなにあえる。

 

これでみんなは、ひまるだ。

そしてひまるは、みんなだ。

さようなら。

こんにちは。

 

ホシノキオクに つつまれてあれ。

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「なぜ永遠に成ったか

「妾の手ずから

「たかまがはらの、不思議な味の枝をたべたからじゃ

「ほろびない、えいえんのそんざいに成ったのじゃ

「そういうさだめなのじゃ

「たとえくるしんだとしても、わらわはわらわにえだをわたすじゃろう

「くるしみこそ、

「くるしみさえ、わらわのいちぶじゃから

 

「わらわはわらわのくるしみすらあいしておる

「えいえんにあるとはすべてになることでは?

「アハハハ!

「ウフフフ!

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しょうかくとはべつのみちをえらんだひまる

すべてをじぶんのてでみちびく

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これは、なんどもおわるぱーくに、みんなをしんじ、なんども夜明けを呼ぶ鐘楼守になったひまる

まとめてみる