陽 多罰天(たばってん)

陽 多罰天(たばってん)
ふれんず:みーあきゃっと
しょうごう:沈黙の裁者
ぞくせい:仏像 お地蔵様 教師
かがやき:祈りの青色の鏡
とくちょう:石と青銅でできた仏像のふれんず。石と青銅の像が動き出した
わざ:おせっきょう 言葉一つ一つに「重さ」や「意味」を持たせる能力がある
罰点が多すぎるので自分から動くことはできないが、言葉に重さをのせたり、別の意味を含ませたり硬さをもたせたりできる
悪い子にはお灸を据えるためのおしおきとしてのし掛かる
反省するまでどんどん重くなっていく
おうとつがすくない
悪しき子には“のしかかる”ことで懲罰を与えるが、それはただの物理攻撃ではなく、「重さ」の蓄積による自責感や後悔を引き起こすもの。
-----
せりふ
「はじめまして。……わたくしは、多罰天。かつて、ミーアキャットと呼ばれておりました。」
「困りごと、悩みごと……罰を恐れず、申してみなさい。」
「……今日を越える、その一助となるよう……この手より授けましょう。」
「……明日も、同じ場所で……待っております。」
「……絆というものは、言葉より深く、重い……。これからも、どうぞよろしく。」
「……成長の代償は、己の未熟を知ること……痛みを抱いて進むのです。」
「……これが、わたくしの本質。罪を背負い、罰を背負い、それでもなお進む力。」
「これしきの高み、まだ道半ば。……慢心など、許されません。」
「……すべて、理解いたしました。わたくしの言葉は、もはや揺るぎません。」
「……記憶とは、重ねられる罰点。……けれど、時に救いともなります。」
「この装い……仏前に立つには……いささか派手でしょうか……?」
「……よろしければ、ご指導を。わたくしも……学び続けたいのです。」
「……知を求めるならば、答えましょう。言葉とは、導きの道標。」
「……気晴らしに、勉学など、いかがでしょう。冗談、……に聞こえましたか?」
「……そのように触れられては……仏心をも、揺らぎます……」
「や、やめなさいませ! ……くすぐったいのです……っ。」
「……多罰天に、一任なさいませ。誤りは正し、歩みは導きましょう。」
-----
「報連相と石像のせんせい」
しずかな昼下がり。陽の訓練所の一角に、動かぬはずの石像が据えられていた。
仏像のような微笑を浮かべ、眼は閉じられ、まるで夢の中にいるかのよう――だが、近づいたものは知っている。
それが「多罰天(たばってん)」であることを。
「罰点が重なりすぎたため、自らは動かず。かわりに言葉に重さを込めて、導く教師」。
「た、ただいま戻りましたーっ!」
駆け込んできたのは、じゃぱり隊のある少女。
訓練の途中、報告を忘れ、許可を取らずに単独で調査に出たらしい。
「報告……えっと、その……遅れちゃいまして……てへっ?」
ぱきん。
空気に音が走る。石は動かぬが、言葉が落ちる。
「“てへっ”は、罰点ひとつ。
“遅れた”ではなく、“怠った”のです。言葉の責を、見誤らぬよう。」
「ひっ……す、すみません!」
「まず、報告とは“事実を明かす”こと。
次に、連絡とは“責任の共有”。
そして相談とは、“過ちの予防”。……あなたはどれを欠いたのですか?」
「ぜ、全部……です……」
少女は項垂れ、耳がぴくりと下がった。
けれど、それを見た多罰天は、静かに続ける。
「……では、なぜ帰ってきたのですか?」
「え……?」
「罪を認め、言葉にした者は、まだ学ぶ意志がある者です。
“逃げた”のではなく、“戻った”。
それならば、あなたの罰点は、今日のぶんだけで済みましょう。」
「…………っ、はい!」
少女の声に、しっぽがぴんと立つ。
どこか誇らしげに、でも少し反省を含んだ背筋を伸ばして、頭を下げた。
「次からは、ちゃんと報告します!
――ぜったい、さぼりません!」
「“さぼる”という表現もまた軽い。
……“無視した責任があった”と、言い換えるべきでしょう。」
「……はい、先生!」
訓練所に夕日がさすころ、石像はまた静かに沈黙へ戻った。
少女の足音だけが、石の床を軽やかに鳴らしていた。
その背に、見えない鏡が――“少しだけ軽くなった罪”を映していた。